企業再建5

 弁護士 佐久間明彦

第1 はじめに

企業の再建手続で、法律に規定があるのは、民事再生法と会社更生法です。前者が一般法で後者が特別法の関係にあります。すなわち、会社更生法は、大規模会社の再建を想定しており、多数の利害関係人に影響を与えることから、民事再生手続に比べて手続が厳格化されています。例えば、民事再生法とは異なり、管財人が選任される管理型しかありません。

また、最も大きな特徴は、会社財産に抵当権を有する等の担保権者であっても、民事再生法のように再生手続外で権利行使できる別除権とはならず、更生計画の中に取り込まれて処理される点です。この担保権を別除権扱いしないことで、会社としては、格段に組織変更等、再建計画策定がしやすくなります。

みなさんも、JALが、会社更生法適用により、再建を図るべくスタートしたことは記憶に新しいことでしょう。

 

第2 更生手続開始の要件

更生手続開始のためには、更生手続開始原因事実が存在し、手続開始障害事由がないことが必要です。

1 更生手続開始原因事実

手続開始原因事実とは、1)支払不能もしくは債務超過のおそれがあること、又は2)弁済期にある債務を弁済すると事業の継続に著しい支障を来すおそれがあることです(会社更生法17条1項)。

破産法15条1項、16条1項が手続開始原因を支払不能・債務超過としているのに対し、上記1)も2)も「おそれがあること」として、要件を緩和しているのは、再建手続である以上、再建できないような状態になる前に手を打たなければ意味がないからです。

2 手続開始障害事由

1)手続費用の予納がない、2)更生計画案の作成・可決・認可の見込みがない、3)不当・不誠実な申立である、といったものは、民事再生法と同様です(民事再生法25条)。

最後の4)裁判所に破産手続、再生手続、特別清算手続が係属し、その手続によることが債権者一般の利益に適合するとの事由だけが異なります(会社更生法41条1項)。これは、会社更生手続が、原則として、破産・再生・特別清算手続に優先することを示しています。なぜなら、会社更生手続を申立てたとき、既に他の手続が始まっていれば、そっちが優先しそうですが、そうとはせず、他の手続によることが「債権者一般の利益に適合する」との条件を充たす場合にのみ先行する他の手続を優先させ、同条件を充たさなければ、後発の会社更生手続を開始させることを意味するからです。

3 申立権者

会社更生手続を申立て得るのは、株式会社の他に、株式会社の資本額の1/10以上の債権を有する債権者及び総株主の議決権の1/10以上を有する株主です(会社更生法17条)。ただし、上記債権者及び株主が申し立てできるのは、前記1の1)支払不能・債務超過のおそれがあること、を理由とした場合に限られます。同2)事業の継続に支障があるかは、会社債権者や無機能資本家と化した株主ではなく、会社の経営陣に判断させるのが妥当だからです。

なお、民事再生法では、単なる債権者に、債務者たる会社と全く同様の申立権を与えています(民事再生法21条2項)。同法が当初、比較的小さな会社の再建を目的として作られたためと考えられます。

 

第3 保全処分

民事再生手続と同様、裁判所は、更生手続開始申立から開始決定があるまでの間に、利害関係人の申立又は職権で、会社財産の処分禁止の仮処分等、会社財産散逸防止の措置を採るとこができます。

そして、会社更生手続において特徴的な保全処分は次のようなものが挙げられます。

1 商事留置権の消滅請求

商事留置権の設定されている財産が開始前会社の事業の継続に不可欠であるとき、開始前会社{保全管理人が選任されているときは保全管理人(開始決定前は管財人が付かないため)}は、商事留置権の消滅請求ができることとなりました(会社更生法29条)。平成14年の改正前は、かかる請求が認められていなかったため、開始決定前に商事留置権により、事業に不可欠な財産の占有が奪われ、事業再生を阻害していたことから規定されたものです。

2 担保権実行中止命令

民事再生法では、厳格な要件の下、担保権の実行中止が独立の規定として設けられています(民事再生法31条)。

これに対し、会社更生法では、他の手続中止命令や包括的禁止命令の一内容として、担保権も含めて規定されています(会社更生法24条、25条3項1号)。会社更生手続では、開始決定により担保権も実行できなくなるため、開始前に中止すべき要請が高いからです。

3 監督委員に対する調査・報告命令

裁判所は、監督委員に対し、開始前会社の取締役、執行役、監査役、清算人等のうち裁判所の指定する者が管財人又はその代理を行う者に適するかについて、調査し、報告することを命ずることができます(同法37条)。これは、管財人には開始前の取締役等が横滑りして就任することが認められているため、管財人職務を適切に行えるかを判断する必要があり、この役割を監督委員に果たさせようというねらいです。