1 はじめに

 会社の経営が傾いた時、必ずしも破産しなければならなくなるわけではありません。
 ある程度の規模の会社になると、通常は複数の事業を手掛けています。そして、そのすべての事業において経営不振というわけではなく、その中には好業績を挙げている事業も存在することが珍しくありません。

 そこで、事業再生を検討する場合、通常、会社の事業を次の4つに分類して対策を考えます。

良い事業      悪い事業
コア事業      ノン・コア事業

 良い事業か悪い事業かという問題と、コア事業かノン・コア事業化と言う問題は、レベルが違うんですね。
 事業の良し悪しは、その事業の収益性で考えます。コア事業で収益性が悪い事業もあれば、ノン・コア事業で収益性の良い事業もあり得ます。ノン・コア事業だから直ちに撤退せよという話にはなりません。

2 事業マトリックス

 そして、この4つの事業をマトリックスで整理すると、次のようになります。

良い事業悪い事業
コア事業
ノン・コア事業×

 まず、コア事業で良い事業であれば、悩むことはありません。もちろん、撤退するなんて決断もありえませんね。
 でも、コア事業が良い事業であれば、そもそも経営不振には通常なりませんけど…。

 次に、ノン・コア事業で悪い事業であれば、これもあまり悩む必要はありません。即、撤退ですね。

 問題は、良い事業であるがノン・コア事業である場合と、悪い事業でコア事業の場合です。
 良い事業なんだから、ノン・コア事業でも続ければいいじゃないかと思われがちなんですが、事業再生するような会社では、通常キャッシュが大幅に不足しています。だから、このノン・コア事業を売却してキャッシュに変えた方がいいかもしれないわけです。
 また、コア事業なのに悪い事業だと、直ちに撤退というわけにもいきませんね。なんせ、コア事業ですから…。この事業の再建ができるかどうかで、会社を再建できるかどうかがかかってきます。この事業が立ち行かなくなれば、最終的に会社を破産させるという選択を余儀なくされるでしょう。

3 事業再生に必要なのはキャッシュ

 ちなみに、良い事業と悪い事業の定義について、少し補足しておきます。

 先ほど、事業の良し悪しは、その事業の収益性で決まると書きました。
 でも、問題は、収益性とは何かです。

 通常、収益性というと、PL上の営業益とか経常利益が頭に浮かぶかもしれません。しかし、事業再生で必要なのは、損益計算書上の利益ではなく、キャッシュです。
 会社は、どんなに赤字でもキャッシュが枯渇しなければ絶対に潰れないんですね。

 だから、この場合の収益性を考える場合には、キャッシュを基準に考えないといけないんです。つまり、その事業が営業活動によって生み出しているキャッシュ・フローです。
 どんなに黒字でも、キャッシュを生み出せていない事業は良い事業とは言えません。

 やはり、日ごろからキャッシュ・フロー経営を心がけることがいかに大事かがわかります。