弁護士  金 崎 浩 之


1 第三者割当増資の問題点
 第三者割当増資とは、既存の株主に新株引受権を与えずに実施される新株発行のうち、縁故者に対してのみ新株の申込みの勧誘・割当を行うことによって増資する方法を言います。

 典型的には、新たに新株引受人となる人・法人との関係強化を図る場合、例えば、その新株引受人に経営参加してもらうとか業務提携を行う場合とかに利用されているようです。
 また、業績不振の時には、新株引受を期待できない場合が多いでしょうから、この場合にも縁故者にお願いして新株引受人になってもらうことによって第三者割当増資が利用されることもあります。

 ただ、第三者割当増資を実施すると、既存の株主が新株を引き受けられないことから、一株の価値が希薄化して株価下落の要因になりうる、経営支配権が突然第三者に移るという事態が起こりうる、などといった問題が指摘されています。
 特に、既存の株主との関係では、保有株式の価値が下落する要因になりますから、投資家保護の観点から問題は大きいと思います。しかも、第三者割当増資が選択される経緯からも、有利な価格で発行されることが多いようです。

2 規制強化
 まず、東京証券取引所が、昨年の8月、新株の発行価格の算定根拠の公表を企業に求める新ルールを導入しました。そのほかに、株価希薄化率300%超の場合には上場廃止、割当先の資金手当や反社会的勢力と無関係であることの確認書の提出などといった新ルールも導入されております。また、株式数が議決権ベースで25%以上希薄化してしまう場合や支配株主が異動してしまうような場合には、経営陣から独立した者の意見を入手するか株主の意思確認を行うかのいずれかの対応を求められています。25%以上薄まる増資は、一般的に「大規模増資」と呼ばれています。ちなみに、経営陣から独立した者からの意見を入手する際、弁護士が選ばれる傾向にあるようです。

 次に、金融庁が内閣府令を改正して、第三者割当増資を行う企業に金商法上の「情報開示義務」を負わせることにしました。
 そして、開示内容に虚偽記載があれば、課徴金の支払いを命じられることになります。
 開示内容の虚偽が見つかり課徴金の支払いを命じられるような事態になれば、それはそれで大きな株価下落要因になり、既存の株主が大きな損害を被るといった展開も起こりえます。
 したがって、企業としては、株主から損害賠償請求訴訟を提起されるリスクも十分検討しておく必要があるでしょう。