各紙の報道にもあるように、JALは会社更生手続きに移行する方針です。

 それと同時に、上場廃止の方針のようです。

 JAの再建には、金融機関に約3500億円の債権を放棄してもらう必要があるそうだんです。

 しかし、そうすると、大口の債権者である金融機関が泣くのに、株主には何らの犠牲も負わないのかという疑問が沸いてきます。

 この理屈を理解するには、会社法の知識が役に立ちます。

 株式会社では、株主は間接有限責任しか負いません。
 したがって、株主よりも先に保護してあげなければいけないのは債権者です。

 例えば、会社が解散する場合を考えてみましょう。
 会社が解散する場合、保有する資産をすべて処分することになります。そして、資産の売却で得たお金はまず債権者への弁済にあてられます。
 そして、債務をすべて弁済し、負債をゼロにしたうえで、まだ残ったお金があったら、最後に出資者である株主に分配します。これが、残余財産の分配です。

 ここで注意しなければならないのは、株主への残余財産の分配は、すべての債権者への弁済がすんでからなんですね。
 債権者への支払いがまだ残っているのに、ちゃっかり株主に配ってはいけないんです。

 したがって、株式会社制度においては、債権者よりも株主のほうが保護されるなんてことがあってはならないんですね。株主よりも、まずは債権者を保護すべきということになります。

 さて、ここでもう一度、JALの会社更生の話に戻しましょう。

 JALが会社更生法の適用を選択することにより、金融機関が約3500億円にも及ぶ債権を放棄せざるを得なくなる…。その結果、JALが再建に成功すると、結局、債権者の犠牲において株主が保護されたことになってしまう…。株主にとって一番困るのは、JALが破産して地上から消滅することです。しかし、会社更生でJALが生き返ると、株主は助かる。でも、金融機関は多額の債権放棄を迫られて犠牲を強いられる…。これはおかしいのではないか、という疑問です。

 そこで、株主にも大いに犠牲を払ってもらおう、ということで今回出てきたのが上場廃止です。
 上場廃止となれば、証券市場で取引できなくなります。JALの株式の価値が大きく下がることは間違いありません。

 ちなみに、報道機関が「上場廃止により、JALの株は紙切れ同然になる」と報道していますが、これは少し不正確です。上場廃止となっても、非上場会社として存続するわけですから、株主には、当然、利益配当請求権がありますし、議決権もあります。株主総会が開催されるときは、招集通知も送付されるはずです。
 しかし、証券市場で売却することができませんので、従来の株価と比べれば、格段に下がるはずです。その意味では、報道機関が紙切れ同然と表現したい気持ちも分かります。でも、倒産情報(会社更生は立派な倒産です)が流れれば、上場廃止にならなくても、紙切れ同然の株価に下がるのが普通なんですけどね。

 ということで、JALの上場廃止ニュースをちょっと会社法の視点から解説してみました。