1 夫婦の学歴

 私の手元におもしろい資料があります。2006年度の人口問題研究所が発表した夫婦の学歴に関する調査です。これは、大卒の夫が選んだ妻の学歴及び大卒の妻が選んだ夫の学歴について調査したものです。同資料に基づいて、以下のようにまとめてみました。

大卒夫の妻の学歴大卒妻の夫の学歴
中学校・高校卒22%11%
短大・専修学校卒46%5%
大学・大学院卒32%83%

 さて、まず大卒の夫についてみてみましょう。
   大卒の夫が最も多く選んでいる妻の学歴は、大卒ではありません。短大・専修学校卒なんですね。一応自分よりは学歴が低い妻を選ぶ傾向にあることがわかります。
 しかし、自分よりも学歴が低い方が必ずしも良いと考えているわけではありません。なぜならば、より多くの夫が、中卒・高卒の女性より、大卒以上の女性を選んでいるからです。
 そうすると、次のように解釈できます。大卒の夫は自分よりも学歴の低い女性を妻にする傾向があるが、あまりにも学歴に隔たりがあるのもよくないと考えている様子であり、中卒や高卒を選択するくらいだったら、自分よりも同等かそれ以上の学歴の女性を選ぶ傾向にある。

 では、大卒の女性が選んだ夫の学歴はどうでしょうか。大卒かそれ以上の学歴の夫を選んでいる女性が実に83%にも及んでいますから、基本的に女性は自分と対等かそれ以上の学歴の男性を選ぶ人が圧倒的多数を占めています。これは、大卒の夫が自分よりも学歴が低い短大卒・専修学校卒の女性を妻にしていることと符合しています。ただ、異なるのはその度合いです。大卒の夫の場合、選んだ妻の学歴の割合に極端な差は見られません。その分布は、46%、32%、22%です。ところが、大卒の女性は、実に83%もの人が大卒かそれ以上の男性を夫にしている点です。女性の方が男性の学歴を重視している度合いがかなり強いことを示しています。

2 このデータが示唆するもの

 確かに女性の高学歴化が進んだことは疑いのない事実です。
 しかし、男尊女卑の名残か何かわかりませんが、夫の側にも妻の側にも、夫の学歴は妻の学歴よりも高い方がいい、少なくとも対等な学歴にとどまるべきだ、妻の学歴が夫の学歴を上回るのは好ましくない、そんな心理が働いていることが読みとれると思います。

 これは何を意味するかというと、女性の学歴が高くなればなるほど、結婚できない人が増えることを意味します。つまり、それだけ非婚化が促進されることになります。なるほど、最近独身の男女が増えているのもうなずけます。

 問題はそれだけではありません。男性の学歴≧女性の学歴という図式は、相変わらず家事は女性の仕事と位置づけられていることも読み取れます。夫が妻に家事の負担を要求するには、女性の学歴が低い方が良いからです。
 そして、これが事実であれば、労働市場にも影響を与えずにはおれません。私がこの問題を人事・労務のコーナーで取り上げているのもそこに理由があります。
 せっかく女性の高学歴化が進み優秀な女性が増えていても、従前通り、女性は結婚してしまうと、家事の負担を期待されているため、仕事に十分な時間を割けないからです。

 これは、労働市場においてある種の歪みを生じさせます。
 本来の市場原理からすれば、優秀な人材ほど、企業からよりベターな条件で雇用され生産活動に活用されるはずです。そのほうが効率的ですから。ここに性別が介在する余地はありません。
 しかし、高学歴であっても、女性が家事を負担するという役割分担であると、優秀な女性よりも少々劣っても仕事に専念できる男性を雇用したほうが、労働力としてはより生産的になりえます。

 う~ん、やっぱり、家事の分担も男女平等であるべきだな、と感じる今日この頃でした。