1 女性外交員6人がパワハラ被害を訴える!

 「パワハラ集団提訴へ 女性外交員6人 所長ら相手取り」

 これは、2009年9月6日付毎日新聞(朝刊)に掲載されていた記事の見出しです。
 でも、本文をよく読むと、「…集団訴訟を大阪地裁に起こす」となっており、「起こした」とはなっていないこと、明治安田生命広報部も、「まだ(提起)の事実関係を確認でいていないのでコメントできない」と説明していることから、まだ訴訟提起されていないのだと思います。

 原告は、女性外交員6人です。本件は訴訟提起前にリークされていることになりますが、同紙の記事を読めば、「訴状によると…」という記載が出てくるので、訴状は完成しているようです。
 また、訴状は弁護士が作成しているはずですから、リークに関しては弁護士も何らかの関与をしているのではないかと推測できます。今後の訴訟活動を有利に展開するための訴訟戦術なんですかね。

2 パワハラは、セクハラよりも難問

 セクハラという言葉が登場してすでに久しいですが、今後、パワハラが労使間の新しい問題として裁判所を賑わしそうです。
 パワハラは、もともと、セクハラとは違った難しい経営問題をはらんでいます。
 そもそも、セクハラはセクシャルなものに限定されます。ですから、程度の違いはあっても、セクハラ的なもの(損害賠償責任が生じない程度のものも含めて)を一掃しても、業務に支障は生じません。

 しかし、企業は、組織ですから、本質的に権力機構です。パワーの行使を当然の前提としています。セクシャルなものを企業から一掃できても、パワーを一掃するわけにはいきません。
 したがって、セクハラ以上に、パワハラ被害の訴えは起こされやすいんですね。

 しかも、さらに厄介なのは、職員から濫用的にパワハラ被害の申告がなされる危険性を持っています。なぜならば、職員は、上司の権限行使に際して、気に入らないことがあれば、パワハラと感じる傾向があるからです。セクハラと比べると、パワハラという表現は、わりと軽く使われます。
 企業の生産を下げ、職員の人格権を侵害するようなパワハラは、言うまでもなく、組織から一掃する必要があります。
 でも、上司の部下に対する適切な指導・監督権行使の範囲内のものでも、職員から一定のパワハラ被害の申告は起こりえます。結局、パワハラか否かの第1次的判断者は、その職員本人だからです。
 したがって、企業としては、今後増加すると思われるパワハラ被害の深刻にどのように対処するべきか、その対策とスキームをしっかり構築しておく必要があります。