先日、11月24日、法制審議会の民法(債権法関係)部会第1回が開催されました。たまたま、そこの委員の先生とお話をさせていただく機会がありましたので、その話を踏まえて書かせていただきます。
民法は、明治に制定されて以降、口語化はされましたが、100年に亘り、根本部分は変更されずに現在まで来ております。判例によって実質的に趣旨が変更されてしまっている部分もありますが、この100年の歴史はすごいもので、それほど弊害がないのが現状です。
では、なぜこの時期に改正をするのかというと、社会の変化によって民法では対応できない部分も出てきているので、困ってからでは遅いので、今のうちに、改正をしてしまおうということのようです。
今回の改正では、民法のすべてが改正されるのではなく、債権法関係の部分が改正されるにすぎません。このように、解釈に従って修正がなされるだけでは、企業の皆さんには何ら影響がありません。しかし、今回の改正では、債権法関係の改正であり、債権法にかかわる時効や法定利率なども変更になります。改正の方法によっては、商法の方が短い時効期間、低い法定利率になる可能性もあります。そうすると、商法の適用を受けるから関係ないでは済まなくなります。
また、今回の改正では、消費者契約法の基本ルールや事業者間取引(商行為法)の基本ルールを民法の債権法部分に取り込むことも検討されています。今ある規定と大幅に変わるということはありませんが、消費者のための、企業にとっては更に厳しい法改正がなされていく可能性は、時代の流れからすると十分に考えられるところであります。
民法上の問題についても、債務不履行、危険負担、契約解除、瑕疵担保責任及び債権時効などについて、変更に向けて議論がなされているようです。
たとえば、時効は短期消滅時効などを廃止し、不法行為は別として基本的には3年から5年に短縮し、原則として一律にする方向で検討されているようです。
また、債務不履行についても、「責めに帰すべき事由」の文言を故意過失又はそれと同視すべき事由をいうとして解釈運用されてきましたが、この文言は誤解を生みかねないということで、変更することが検討されています。変更により、従前の解釈が変わるものではないということでありますが、文言を変更することにより、無過失責任となる可能性も全くないとは言えず、動向について注意を要するところであります。
以上のように、民法の重要な部分に変更が生じ、企業の皆さんにも重大な影響を与える可能性があります。
法制審議会の部会は、通常月1回、2時間程度開催されるものですが、今回の部会は、月1回、4時間で開催されているようです。大きな問題なので、通常の倍の時間をかけたからといってそれほど早く結論が出るとは思えません。おそらく、1年とか1年半とか先に中間試案が出てくるでしょう。ただし、大きな変更がありますので、改正の動向を見守り、事前に十分に対処しておく必要があると思われます。
今後、私の方でも情報が入りましたら、このブログで紹介できたらと考えております。なお、現在の民法改正の動向については、NBLという雑誌の別冊126号に詳しく記載されていますので、興味のある方はご覧ください。
弁護士 松木隆佳