弁護士の森山です。

今回も、前回に引き続き事業承継における種類株式の活用法について考えようと思います。
従前から、事業承継において種類株式をどのように活用するかについては、いろいろな議論がなされており、すでに御存知の方も多いとは思いますが、今回は役員選任権付株式についてです。しばらくお付き合い頂ければ幸いです。

役員選任権付株式について

 役員選任権付き株式とは、種類株主総会で取締役・監査役を選任することを定めた株式です。すなわち、この種類株式を有していれば取締役・監査役を選任することができることになります。
 このような株式を使用する最適な事例としては、長男にも次男にも経営参加させてあげたいが、長男を経営トップにしたい場合が考えられます。

 事業承継での具体的活用法としては、普通株式と役員選任権付き株式を発行した上、遺言で後継者(長男)に役員選任権付株式を、それ以外の者には普通株式を相続させます。
 こうすれば、長男、次男とも経営には参加できますが、長男が役員選任権付株式を取得したことにより、長男が役員の選解任の権限を保有でき、長男の思いどおりに役員選任ができ、会社の運営を容易にすることが出来ます。

 ただ、問題点としては、後に兄弟間で経営方針を巡り争いになり、それが経営の不安定要因になる可能性があります。

 このような問題の対策としては、後継者でない者の株式を取得条項付株式としておくという対策があります。

 取得条項付株式とは、会社が株主の有する株式の取得を請求できる権利のある株式で、わかりやすく言うと、会社が株主から対価を払ってその株式を取り上げることができるものです。
このような株式にしておけば、長男・次男間で経営方針を巡り争いが生じた場合には、取得条項により、会社が次男の保有する株式を取得すれば、このような争いを回避することができると思います。