こんにちは。弁護士の吉成です。

 債権回収において、あらかじめ担保を取っておくことは有効な手段です。債権者が他に多数いても優先的に弁済が受けられますし、訴訟が不要ですし、相手方が破産しても回収が可能だからです。
 しかし、あらかじめ担保を取っておくことができなかった場合でも、法律上当然に発生する担保権もあります。

 その一つが先取特権です。さきどりとっけんと読みます。

 その先取特権の一つとして、動産を売却したが、相手方が弁済しない場合、その動産について優先弁済を受けられるというものがあります。
 これを一般に動産売買先取特権と呼んでおります。
 予めの合意は不要で、動産の売買があれば、当然に発生する担保権です。

 では、この動産売買先取特権はどのように実行するのでしょうか。

 それには二つのパターンがあります。

 一つは、まだ相手方がその動産を占有している場合です。
 この場合は、裁判所に競売を申立て、競売代金から配当を受けることになります(物自体を取り戻すというものではありません)。

 その際、①その動産を提出するか、②占有者が差押えを承諾することを証する書面を提出するか、③担保権の存在を証する文書の提出をするかのいずれかが必要となります。
 ①②は相手方の協力がなければ難しいので、現実的には③によることが多くなると思われます。
 担保権の存在を証する文書としては、契約書、発注書、納品書、受領書等が必要とされます。それゆえ、契約締結段階から取引の各場面でしっかりと書面を作り、ちゃんと保存しておくことが重要になります。

 もう一つは、相手方が第三者に転売してしまった場合です。

 この場合、転売代金がまだ相手方に支払われていなければ、裁判所に転売代金の差押えを申立て、第三者に取り立てることになります。
 この手続においては、自分と相手方との間の契約書、発注書、納品書、受領書等だけでなく、相手方と第三者との間の契約書、発注書、納品書、受領書等が必要となります。この手続をしなければならない場面では、相手方の協力は期待できないでしょうから、第三者に頼んで、これらの書面を出してもらうことになります。
 なお、第三者が相手方に転売代金を支払ってしまった場合には、手遅れになります。したがって、しっかりと債権管理を行い、迅速に行動することが重要となります。

弁護士 吉成安友