今年ももうすぐ終わりですので、これまでの事業再生ADRの経過を報告したいと思います。
ご存知の方も多いと思いますが、事業再生ADRは私的整理のひとつで、金融機関の貸付債権のカットを通じて事業の再建を図ろうというものです。したがって、有利子負債の整理で再建可能なレベルの企業が利用できる手続きと言われています。
2009年度に事業再生ADRを利用した企業は、以下の通りです。
3月 日本アジア投資 投資
4月 コスモスイニシア 不動産
6月 日本エスコン 不動産
8月 さいか屋 百貨店
9月 アイフル 消費者金融
9月 ウィルコム 通信
11月 日本航空 航空
さて、事業再生ADRは、民事再生のような法的整理と比べると、企業価値の毀損が少なくてすむと言われていますが、対象企業の多くが大企業であるため、マスコミで大きく報道されてしまいます。そうすると、本当に企業価値の毀損が少ないのか疑問ですよね。
例えば、今年の11月に事業再生ADR手続きを申請した日本航空。この会社が再建を果たすには、大規模なリストラが不可欠です。そして、公的資金も注入されることになりました。普通に考えれば、日本航空は倒産したに等しい。
そして、事業再生ADRの申請です。私的整理は、あくまでも裁判所を関与させないというだけで、立派な倒産処理手続きです。しかも、マスコミで騒がれているわけですから、立派に倒産企業の烙印を押されてしまいます。
企業価値の毀損が少ないと言っても、会社更生法や民事再生法の適用と比べればマシという程度でしょう。
ちなみに、事業再生ADRを利用するには、手続費用としてどのくらいかかるのでょうか。
報道されているところによると、一般的に数千万円かかるそうです(2009年11月23日日経新聞朝刊15面)。でも、これは一般的にかかる費用ですから、たぶん日本航空の場合はこんな額ではすまないでしょうね。倒産手続きってけっこうお金がかかるもんなんです。
最近にわかに注目を集めている事業再生ADRですが、数千万円の費用がかかるとすると、利用できるのは大企業に限られるでしょうね。
私は、日本経済の活力の源である中小企業の再生のほうが急務だと思うんですが…。大企業の再生と言う「おいしい話」にみんな群がるんですね。
こんなご時世だからこそ、弁護士会の役割が大きいと思います。弁護士会主導で中小企業のための事業再生ADRを作るべきですね。