こんにちは。長谷川です。
今日は、地味~な、話をしようと思います。
「そんな法律あったんだ」的な話で、中小企業の皆様にとって「あまり関係ないんじゃないか」と思われるかもしれませんが、まあ、さら~っと読んでみて下さい。関係しない訳でもないって思えるお話しも出てきます。
その法律とは「外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律」です。
平成21年4月24日に公布されましたがまだ未施行です。(公布の日から1年以内に施行される予定です。)さて、どういった法律かというと、要するに、外国及びその機関等が、日本の民事裁判権から免除されない場合とか、外国やその機関の財産に対する保全処分及び執行手続きから免除されない場合を明示した法律です。あと、外国及びその機関等に対する訴状等の送達や民事裁判手続きの特例についても規定しています。
「なんじゃそれ?」って感じですよね。
説明しますね。
原則として、外国及びその機関等には日本の裁判権は及ばないと考えられています。理由は、国家主権・主権平等です。つまり、国と国は互いに対等だから、一方の司法権に他方の国家が服さなければならないって、何となく、「一方が他方の国家より偉い」みたいな感じになってしまいますよね。
で、国家やその機関は、自ら同意しない限り、被告として外国の裁判管轄権には服さないという原則となるわけです。(絶対免除主義といいます。)
これについては、例えば、最高裁平成14年4月12日判決みたいな事案だと、「あ~、そうかもねえ」と思っていただけると思います。この事案は、在日米軍基地の飛行場から飛び立つ航空機の騒音について、人格権及び不法行為に基づいて周辺の住民らが航空機の離発着差し止めと損害賠償をアメリカと日本政府に求めたというものです。
で、アメリカは「日本の裁判権に服さない」と言明しました。判決も、アメリカに日本の民事裁判権は及ばないという結論を下しました。
この事案自体は、多分、違和感を感じない方が多いのではないかと思います。
でも、これを貫くと外国の政府やその出先機関(例えば大使館とか)との間では、怖くて商売できないって感じになりませんか?「外国の政府やその出先機関との商売」ってちょっと想像つきづらいかもしれませんが、例えば、大使館に、事務用品を納入するとか、定期清掃の委託を受けるなんていうのは、分かりやすいですよね。
そして外国政府やその出先機関が、債務不履行を起こしたとしましょう。
つまり大使館に事務用品を納入していたら、あろうことか大使館が代金を支払ってくれないという事態が発生したと想像して下さい。それで、売掛金請求の裁判を起こしたら「外国及びその機関等には、日本の裁判権は及ばないから裁判できません」って言われたらどうします?中小企業の皆様なら、「冗談じゃない!」って怒りますよね。
「大使館」っていう物凄く優良(と思える)取引先を信用して取り引きしたら、お金を払ってくれないどころか、裁判もできないなんて、そんな不合理な話、ありえませんよね。
この許されない不合理と、前記の絶対免除主義とをどう調整するのか、といったお話を次回、してみたいと思います。
(本当は、1回で話してしまおうと思っていたのですが、思いの外、長い話になってしまったので、急遽、2回に分けてお話しすることにしました。)
では、また再来週~。
おしまい。
弁護士 長谷川 桃