弁護士 仁藤 仁士

 

皆様、こんにちは。

 

1 イントロ

   日本では退職金制度が一般的に普及しています。ちなみに、弁護士は引退して登録を抹消しても功労金のようなものは出ません(実際はその方の勤務形態や勤務先次第でしょうか)。

   さて、標記の件ですが、退職金の支給額の算定については各会社で様々な制度が敷かれていると思われます。仕事柄、退職金規程を目にすることがありますが、千差万別ですし、計算してみますと、金額にものすごくばらつきがあります。

   今回は、退職金の算定に際して、減額を行うことができるのか、それはどのような場合に許容されるのか、事例を少し紹介しながらお話させていただきます。

 

2 退職金の性格

   実は一言では申し上げられない難しさがあります。

   例えば、勤続年数に応じて退職金支給率が定められていて、退職時の基本給とかけ算した金額が支給される、というパターンが多いかと思います。このような場合、賃金額や勤続年数を算定の基礎としている点から、賃金の後払い的な性格が見出されます。

   他方で、支給率の定め方にも依りますが、勤続年数の増加に応じてある一定の年数を超えると飛躍的に支給率が上昇したり、退職の理由によって支給率が大幅に変わったりする場合があります。このような場合、会社への貢献度を加味していることがうかがえることから、功労に対する報償という性格を見出すことも可能です。

   すなわち、各会社における退職金の算定の仕方や実際の運用を見てみないことにはその会社における退職金の性質はなかなか見えてこないといえるのです。

 

3 退職金の減額

(1) 2で見ましたように、会社によっては退職理由によって退職金支給率が異なっていることがあります。

   現在採用されている会社もあるかもしれませんが、退職後に元の勤務先と同業種の会社に就業する場合には退職金の半額を会社に返還する、という就業規則を設けていた会社があり、かつて裁判となりました。最高裁では、本件の退職金が功労報償的な性格を併せ持っていることを踏まえると、合理性のない措置であるとはいえない、としてその就業規則は有効であると判断しています(最高裁昭和52年8月9日第二小法廷判決・三晃社事件)。

   他にも、退職金全額不支給の就業規則を認めたという判例(名古屋高裁平成2年8月31日判決・中部日本広告社事件)もあり、金額は考慮すべき一つの要素ではあるのですが、専らその会社における退職金の性格をどのようにとらえるかがポイントなっているといえます。

(2)  前記最高裁判例では、功労報償的な性格を認めており、退職金を半額にされることを競業する他社に就く代償とみて許容することが可能です。これに対して、賃金の後払い的な性格を突き詰めると、本来もらえるはずの対価が半分支払われないことになるので原則は許されないことになるでしょう(賃金全額払いの原則がありますので)。仮に認めるとしても、前記中部日本広告社事件判決のような、背信性の強い場合に限って例外的に減額等を認める、という厳格なスタンスとならざるを得ません。

今回のような就業規則を設ける際には、先々のことや他の規程とのバランスを考える必要がありそうですね。

 

 今回もお付き合いいただきありがとうございました。