先週は、台風18号の影響により、交通機関が乱れ、業務にも営業が出たのではないでしょうか。関東地方は直撃したわけではないのに、あれほどまでに混乱するようでは、今後、直撃した場合にはどうなるのかと、心配であります。

 さて、10月になり、毎年恒例の最低賃金の見直し時期がやってまいりました。

 そもそも、最低賃金とは、なぜ定められているのでしょうか。最低賃金法1条によると、「賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保証することにより、労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与する」ためであるということです。簡単に言えば、賃金は労働者の生活の基盤ですから、最低限の生活を確保できるように、賃金の基準を定めましたってことですかね。

 最低賃金制度により、使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対して、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません(法4条)。最低賃金より低い賃金を定めると、それは無効になり、最低賃金の給与を支払わなければならなくなります。

 最低賃金には、地域別最低賃金と特定最低賃金とがあります。地域別最低賃金は、各都道府県において定められています。地域別に定められているのは、地域によって、物価が異なるため、生活の最低水準が異なってくるためでしょう。平成21年度の最低賃金は、一番高額に定められているところが東京都であり791円です。他方、一番安く定められているところは、佐賀県、長崎県、宮崎県、沖縄県の629円であります。全国平均は、713円です。こうして見ると、地域によってずいぶん差があるものですね。各都道府県においてどのように定められているか、興味のある方は、厚生労働省のHPからご確認ください。
 http://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/kijunkyoku/minimum/minimum-02.htm#01
 特定最低賃金というのは、産業別に特別に、最低賃金が定められているものです。こちらも各都道府県ごとに定めてあるので、ご紹介し切れませんので、興味のある方は、厚生労働省のHPからご確認ください。
 http://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/kijunkyoku/minimum/minimum-19.htm

 ところで、最低賃金法が適用される労働者とは、労働基準法上の労働者と同じであり、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者(労働基準法9条)を言います。簡単に言えば、正社員であろうが、アルバイトであろうが、パートであろうが、働いて賃金をもらう立場にいれば労働者です。誤解をおそれずに言えば経営者を除いて会社で雇っている従業員には、ほぼ適用されるでしょう。

 最低賃金の計算の基準となるのは、あくまでも基本給です。残業手当や通勤手当、賞与などは含みません。基本給の年額を計算して(たとえば月の基本給を12倍するなど)、これを年間の総所定労働時間で割って見てください。ご自身の会社の従業員の各人の時給賃金を計算することができます。そして、これが最低賃金を下回っている場合、最低賃金法に反していることになります。
 個人的には、労働者がすべてを理解した上で合意して働いているのであるから、双方が納得していればいいではないかと思いますが、最低賃金法違反でありますから、見直しはしておいたほうがいいでしょう。

弁護士 松木隆佳