事業場ごとの就業人数が常時10人以上を使用する場合は、就業規則を定めなければなりません。就業規則は、事業場内の労働者の労働条件を公平かつ統一的に定め効率的な事業運営を行うこと等を目的として作成されます。では、就業規則を定めた場合、法的にどのような効力があるのでしょうか。

労働契約の最低基準

 労働契約法12条は、「就業規則に定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分について無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則の定める基準による。」と定めています。
 この規定により、ある労働者が、就業規則よりも不利な条件で労働契約を締結したとしても、就業規則に定める基準に従うことになるため、就業規則は、労働契約の最低基準を定める効力をもっていることになります。

労働契約の補充

 労契法7条は、「使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。」と定めています。

 例外として、特定の労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、最低基準となる場合を除き、この限りではありません。
 この規定により、労働契約には定められなかったが、就業規則には定められている労働条件は、就業規則により補充されることになります。

 就業規則のこれらの効力は、従前から判例により認められていた見解を労働契約法に組み込んだものです。
 上記の2つの効力は、就業規則を周知すること及び内容が合理的であることが要件となっています。
 就業規則を一度定めるだけで、多くの労働者の労働条件が決まることになるため、上記の2つの要件を満たす必要があるのです。

 なお、就業規則が、法令又は労働協約に反する場合には、当該反する部分については、上記のような効力は認められません(労契法13条)。
 法令よりも低い基準を定めることはできませんし、労働組合等と企業の交渉の結果締結される労働協約を使用者が一方的に定めることが可能な就業規則よりも優先する趣旨です。

 次回は、就業規則を変更する際の留意点について、お伝えしたいと思います。