1 消費者金融大手の経営難
過払い訴訟の急増により、消費者金融はどこも深刻な経営難に陥っています。
さすがに大手の4社(アコム、プロミス、アイフル、武富士)は大丈夫だろうと言われていたのですが、先月、アイフルが事業再生ADRに再生支援の申請をしたことはこのブログでも取り上げた通りです。
消費者金融は、過払い金の支払への引当金の調達に四苦八苦しておりますが、過払い金請求だけにとどまらず、改正貸金業法の総量規制により、市場が大幅に縮小するというのが大方の観測です。
過払いと改正貸金業法でダブル・パンチを見舞われた消費者金融は、暫く苦しい経営の舵取りを余儀なくされると思われます。
2 三井住友銀行出身者がプロミスの社長に
さて、2009年10月9日付けの日経新聞(朝刊)で、おもしろい記事を見つけました。
プロミスの創業一族の神内博喜社長が退任し、代わりに三井住友銀行出身の久保健氏が今年11月に社長に就任することになったそうです。
ご存じの通り、プロミスは、三井住友フィナンシャルグループの傘下にあります。
最近の観測では、消費者金融大手4社のうち、銀行の傘下に置かれている会社とそうでない会社とでは、経営難を乗り切れるかどうか明暗が分かれるのではないかとも言われています。
とにかく、消費者金融大手は、どこも過払い金支払原資の確保に迫られております。
そうすると、銀行系列はやっぱり有利。
アイフルは、事業再生ADRを通じて、融資銀行団に返済猶予の金融支援をお願いしていますが、アイフルはご存じの通り銀行の傘下に入っておりません。アイフルと銀行の関係は、取引関係にあるだけです。
しかし、プロミスと三井住友の関係は、単なる取引先ではなく、グループ内の身内関係になります。
こうなると、救済の意欲は全然違ってきますよね。プロミスが未曾有の経営難に陥っているこの時期に、三井住友銀行出身者が創業一族に代わって社長に就任する意味は大きいと思います。
ちなみに、アコムは三菱UFJフィナンシャル・グループ系列ですが、武富士はどこの傘下にも入っていません。
過払いと改正貸金業法のダブル・パンチで経営難に陥っているのは、アコムや武富士も同じはず。この両者の今後の展開も注目されます。
3 あり得るスキーム
事業再生ADRの活用で経営難を公に宣言してしまったのはアイフルだけですが、他の大手3社も人ごとではないはずです。
アイフルが利用したのは事業再生ADRですが、今後、アイフルも含めて大手4社の中で民事再生法を利用するところが出てくるのではないかと私は見ています。
今回アイフルが融資銀行団に要請しているのは、あくまでも返済の猶予です。債権の大幅カットではありません。しかも、過払い債権は対象外なんですね。こちらは過払い債権者と個別に交渉して支払期日を先送りするしかないのでけっこう大変です。
もし、消費者金融大手が思い切って民事再生法を利用したら、話はだいぶ違ってきます。
現在の民事再生実務だと、債権の9割カットを見込めます。そうすると、負債の1割だけ弁済すればよいことになります。
これが実現できれば、かなり楽になるはずです。巨額な過払い返還債務が1割になるわけですから…。
でもプロミスについては、その可能性は低くなりました。三井住友から送り込まれた人が社長に就任したのに民事再生となってしまっては、面目丸潰れです。創業家の社長のままやればいいはずです。何とか法的整理を避けて再建する途を模索しているんだと思います。
事業再生ADRでアイフルは再建できるのか、プロミスはどのようなスキームで再建を図るのか、アコムと武富士はどのような手を考えているのか。消費者金融業界の今後の行方が注目されます。