企業再建6

 弁護士 佐久間明彦

第1 はじめに

会社更生法は、手続の不透明性を排除し、公平性を図るため、厳格な手続を用意しました。しかし、厳格な手続規定を定めたことで、手続の進行に時間がかかり、従来は余り利用されないという現実がありました。そこで、平成14年の改正により、手続の迅速化を目指した種々の規定が設けられました。それらの改正規定にも注目しながら、今回も、会社更生手続の説明をしていきます。

前回は、会社更生法による企業の再建手続の概要や、手続開始の要件等について述べました。今回は、会社更生法に基づく企業の再建手続が具体的にどのように進められていくかについて、触れていきたいと思います。

 

第2 機関

会社更生法は、手続の対象が大規模な株式会社であるだけに、民事再生法に基づく一般的再建手続に比し、関与する機関も複雑な形態となっています。

「監督委員」という名称は同じであっても、民事再生法における「監督委員」とは、登場する場面と役割が全く異なるということもあり、注意が必要です。

更生手続開始前と開始後とでは、関与する機関が異なるため、それぞれに分けて説明します。

1 更生手続開始前

(1) 保全管理人

裁判所は、更生手続開始申立から更生手続開始決定があるまでの間に、更生手続の目的達成に必要と認めれば、会社の業務・財産に関し、保全管理人による管理を命じることができます(会社更生法30条1項 保全管理命令)。

保全管理人には、会社の事業の経営権及び財産の管理・処分権が専属します(同法32条2項本文)。なお、保全管理人の管理・処分できる財産は、日本にあるものだけに限りません。会社更生法が対象とする大規模会社は、国籍をまたいだ多角化経営をしている場合も多く、国内財産にしか権限を及ぼせないのでは、多国籍企業の再建事業に支障を来すことになるからです。ただし、会社の常務に属しない行為については、裁判所の許可を得なければなしえないとされています(同条項ただし書)。

(2) 監督委員

裁判所は、更生手続開始申立から更生手続開始決定があるまでの間に、更生手続の目的達成に必要と認めれば、監督委員による監督を命じることができます(同法35条1項 監督命令)。

これは前回にも少し触れましたが、裁判所は、会社の役員責任等査定決定を受けるおそれのある者を管財人に選任できないとされるところ(同法67条3項)、どの役員が責任を負うかの判断が難しいため、その判断をする役割を監督委員に果たさせようという制度です。

なお、民事再生法における監督委員は、手続開始前だけの機関ではありませんし、役割も会社の業務・財産の管理や再生計画遂行の監督等であり、会社更生法上の監督委員と全く異なります(民事再生法54条、188条等)。

(3) 調査委員

裁判所は、更生手続開始申立から更生手続開始決定があるまでの間に、必要と認めれば、更生手続開始原因事実・障害事由の有無、保全処分・保全管理命令・監督命令・役員責任査定決定を要する事情の有無等について、調査委員による調査を命じることができます(同法39条 調査命令)。

本来、上記事項の調査は、裁判所が職権で行うべきものですが、調査委員にこれを補助させようとのねらいがあります。

2 更生手続開始後

(1) 管財人

管財人は、更生手続開始決定と同時に選任されなければならない必要的機関です(同法42条1項)。上記更生手続開始前の3つの機関がいずれも任意的機関であったこと対照的です。管財人が、会社更生手続において、主たる役割を果たすことは間違いありません。

会社更生法における管財人は、複数選任されうるし(同法42条1項)、法人も選任される可能性があります(同法67条2項)。更生手続の対象となる株式会社では、大規模な事業が展開されていることが多く、個人の管財人が一人で職務を果たすのは困難となるおそれがあるからです。

管財人には、手続開始前の保全管理人と同様、会社の事業経営権や財産の管理処分権が専属します(同法72条1項)。

管財人には、保全管理人に選任された弁護士がそのまま管財人になるケースと、再建を支援するスポンサーから派遣された役員等が管財人になるケースとがあります。前者を法律管財人、後者を事業管財人と区別して呼ぶことがあります。前述したように、管財人は複数選任されうるので、法律管財人と事業管財人は併存しうるわけであり、両者で役割分担をしつつ、事業の経営面の再建は専ら事業管財人に任せるということもよく行われています。

ただ、そういった事情から、管財人には、自己取引禁止や競業避止義務が課せられているのです(同法78条、79条)。

(2) 調査委員

裁判所は、更生手続開始後に、必要と認めれば、役員の財産に対する保全処分・役員責任査定決定を要する事情の有無、管財人作成の貸借対照表・財産目録の当否、更生計画案の当否等に関し、調査委員による調査を命じることができます(同法125条1項)。開始後の調査命令は、手続や会計の適正・透明性を確保する趣旨です。

(3) 関係人集会

関係人集会とは、更生会社、管財人、届出債権者、株主等の利害関係人により構成され、会社の財産状況を報告したり、更生計画案の決議をするために招集される集会をいいます(同法114条1項)。

通常、開催は任意的ですが、管財人・更生債権者委員会・更生担保権者委員会・届出更生債権評価額の1/10以上を有する更生債権者・総株主の議決権の1/10以上を有する株主が申し立てたときは必要的となります(同条項前段)。

(4) 関係人委員会

関係人委員会とは、更生手続に利害関係人の利益を反映させる目的で、一定の要件を備えた場合に、裁判所によって更生手続に関与することを承認された組織体をいいます(同法117条1項)。

更生手続においては、株式会社を巡る利害関係の多様性に配慮し、単一の債権者委員会等ではなく、債権者、担保権者、株主といった利害関係人のグループごとに個別の委員会を構成できるとされている点が特徴的です。

(5) 代理委員

更生債権者、株主等は、裁判所の許可を得て、共同し又は個別に代理委員(複数可)を選任できます(同法122条1項)。

そして、裁判所も、利害関係人が著しく多数に上り、代理委員を選任しないと手続進行に支障があると認めれば、代理委員を選任することができます(同法123条1項)。

代理委員は、被選任者である更生債権者、株主等のために、更生手続に属する一切の行為ができるとされています(同法122条2項)。

かかる機関も、大規模会社を対象とし、利害関係人が多くなることから、手続の円滑を図る趣旨で設けられたものであり、会社更生手続ならではの特徴的制度といえます。