1 アイフルの事業再生スキーム

 以前この弁護士ブログで、アイフルが事業再生ADR手続きの申請を行ったことを取り上げましたが、そのスキームについては触れていなかったと思いますので、ここで補足しておきます。

 今回のスキームの中心は、住友信託銀行、あおぞら銀行などの銀行団に対して、債務の返済期限の延長をお願いするという内容です。要するにリスケです。過払い金を請求者との間でのリスケではなく、あくまでも銀行との間における有利子負債のリスケです。

 しかし、関係者の間では、アイフルが事業再生ADRを活用したことにより、却って過払い金の返還請求が増えるのではないかという懸念もあるようです。
 2007年9月にクレディアが経営破綻したときにも、過払い金請求が急増したそうです(2009年9月19日付日経新聞朝刊)。しかも、クレディアに対する請求だけではなく、他の消費者金融に対する請求も増加したという話です。

 これは納得がいく話です。事業再生ADRでも民事再生でもそうですが、そのような手続きに着手したということを発表すれば、倒産メッセージを発したのと同様の効果が生じます。本当に再建できるかどうか分からないわけですから、「破産する前に取りっぱぐれがないように、今のうちに回収しよう」となるのは自然です。
 そして、過払い金の請求により経営が圧迫されているのは、消費者金融全般に言えることですから、ある金融機関が経営破綻すれば、「他社もやばいんじゃないか…」となり、過払い金請求の駆け込みを誘発してしまうという構図です。

2 有利子負債のリスケで乗り切れるか

 今回の事業再生ADRのスキームだと、銀行に対する有利子負債のリスケにとどまります。社債の償還も予定通り行う様子なので、今回のスキームは、専ら銀行との間の交渉にとどまります。

 しかし、経営破綻の最大の原因は、言うまでもなく過払い金の返還請求です。ここを全く触らずに再生できるのか甚だ疑問です。アイフルも例外ではないと思いますが、多くの消費者金融は、過払い金返済の資金に充てるため、貸付残高が著しく減少しています。つまり、資金を本来の本業に充てられないわけです。
 仮に銀行団がリスケに応じてくれても、それで余裕が生まれた資金は、やっぱり過払い金の返済に充てられるんだと思います。
 本来であれば、企業の収益の中から過払い金返済資金を調達すべきであるのに、資金が足りず、本業による収益が激減しているため、それもできません。八方ふさがりの状態です。

 このような状況下で、本当に銀行がリスケに応じてくれるのか。リスケに応じたにもかかわらず、再建に失敗すれば、ババを引くのは銀行です。今度は銀行が不良債権の山を築きます。
 銀行との間のリスケでアイフル再建の見通しがたたないと、銀行としてもおいそれとリスケに応じるわけにはいかないかもしれません。
 今回の事件は、他の消費者金融機関も固唾をのんで見守っていることでしょう。