こんにちは、弁護士の前田です。
今日は、債権回収のうち強制執行の一つである、動産執行について、お話しします。
1 まず、動産とは何を指すのでしょうか。
民事執行が可能な動産には、民法上の動産(民法86条2項、3項:土地およびその定着物以外の物並びに無記名債権)の他に、登記することが出来ない定着物(庭石、鉄塔、建築中の建物等)・土地から分離する前の天然果実で1ヶ月以内に収穫することが確実であるもの、及び裏書の禁止されている有価証券以外の有価証券もこれに含まれます(民事執行法122条1項)。
では、動産であれば何でも差し押さえられてしまうのでしょうか。
動産が生活必需品である場合等には、差し押さえられては困ります。そこで、法は「差押禁止動産」を定めました(同法131条)。
たとえば、生活に欠くことの出来ない衣服や寝具等(同条1号)や、自己の労力により漁業を営む者の漁具等(同条5号)、債務者またはその親族がうけた勲章等(同条10号)などが、列挙されています。
2 では、差押えは実際にはどのような形でなされるのでしょうか。
差押えを実際に行うのは、執行官です。
執行官は、動産執行申立書に記載された目的物の所在場所で、債務者が占有している動産を奪って自ら占有します。その際には、その動産の所有権が実際は第三者の物であったとしても、その差押えは違法ではありません。
たまたま債務者に動産を預けていただけの第三者であっても、それを差し押さえられた場合には第三者異議の訴え(同法38条)という方法によって争うしかありません。
差し押さえた動産は、執行官が自ら占有する場合、執行官の裁量で債務者に保管させ、またはその使用を許すことも出来ます(同法123条3項、4項)。また、差押債権者や第三者に保管させる場合もあります(同法規則143条1項)。
この場合には、差押物に封印その他の方法でその物が差押物である旨、差押えの年月日並びに執行官の職及び氏名を表示しなければならない。加えて、保管者に対し、差押物の処分、差押えの表示の損壊その他の行為に対する法律上の制裁を告げなければならないとされています(同規則同条2項、3項)。
弁護士 前田瑞穂