こんにちは。弁護士の吉成です。
今回は、ゴルフ会員権に対する強制執行についてお話しします。
ゴルフ会員権には、いくつか種類がありますが、最も多いものが預託金制というものです。これは、会員が預託金を払って入会し、会員は、会費を払う義務を負う一方、施設を優先的に利用する権利、預託金の返還を求める権利を有するというものです。以下では、この預託金制のゴルフ会員権を念頭に置いてお話しをします。
まず、ゴルフ会員権が強制執行の対象となるかどうかですが、昭和60年8月15日東京高裁決定は、「本件会員権は、いわゆる預託金会員組織ゴルフ会員権と称せられるもので、抗告人所有のゴルフ場施設の優先的利用権、会費納入等の義務、預託金返還請求権という債権債務から成り立つ包括的な債権契約上の地位であるが、かかる地位は、財産的価値を有し、執行債権の引当てとなる適格をもつものというべきであるから、民事執行法一六七条一項にいう『その他の財産権』に当たり、同法一四五条の差押命令の対象となり得ることはいうまでもないし、また、これが譲渡性を有することはその財産権としての性質上当然のことであるから、これにつき同法一六一条一項の譲渡命令を発し得ることも論をまたないというべきである。」として、債権執行の例より、強制執行の対象となるとしております。
なお、金銭的な満足ということでいえば、預託金返還請求権だけを差し押さえることが端的であるようにも思われますが、上記のようにゴルフ会員権が包括的な地位であり、預託金返還請求権と施設利用権が不可分であることから、原則として預託金返還請求権だけを差し押さえることはできないと解されています。そして、例外的に、会員が除名されているなどして預託金返還請求権だけが残っている場合に限り、預託金返還請求権だけを差し押さえることができると解されています。
具体的な執行手続きの流れとしては、まず申立てを行い、申立てが適法なものとして受理されると、執行裁判所が差押命令を出します。これにより、債務者が会員権の処分や預託金の取り立てをすることが禁じられ、ゴルフ場の運営会社が会員権の処分についての承諾、名義書換、預託金の返還をすることが禁じられます。
差押命令がなされた後の債権者の満足は、原則として、売却命令や譲渡命令によることになります。
売却命令とは、執行裁判所の定める方法による被差押債権(財産権)の売却を執行官に命ずる命令であり、売却手続には、競売不動産の売却に関する規定が準用されています。
譲渡命令とは、被差押債権(財産権)を執行裁判所が定めた価額で支払に代えて差押債権者に譲渡する命令です。
ゴルフ会員権は、預託金返還請求権だけを差し押さえられる場合以外は、取立てをするという性質のものではないので、こうした売却命令や譲渡命令により満足を受けるということになるわけです。
以上
弁護士 吉成安友