1 日タイ関係

 タイの有識者の日本に対する関心は、非常に高いと思われます。

 日本人にはあまり知られておりませんが、1997年のアジア通貨危機の際、タイバーツが大暴落し、いくつかの銀行も倒産しました。その時、先進国の中で最もタイを援助したのは日本です。この事実は、タイの有識者の間では常識です。

 2000年頃、私がタイに滞在していた時、あるチュラ大教授の講演を聴く機会があったのですが、その時の教授の話は、アジア通貨危機に及び、このように言われました。

 「アジア通貨危機の時、我々を最も援助してくれたのは日本でした。ちなみに、ほとんど何もしてくれなかったのはアメリカでした。」

 でも、同教授は、日本に感謝の意を表明すると同時に、冷静な分析をしていました。教授の話は続きます。

 「タイ経済に最も深くコミットしていたのは日本でした。だから、日本としては、タイ経済の打撃を無視するわけにはいきませんでした。これに対し、アメリカはタイ経済にそれほどコミットしていたわけではありませんでした。だから、アメリカにとって、タイの経済は重要ではなかった。
 だから、タイと諸外国との経済関係をもっと強化していかなければいけないと痛感しました」

 要するに、日本がタイに援助の手を差し伸べたのは、アジアという同朋意識ではなく、利害だったというわけです。

2 タイは日本の政局に注目している

 大企業だけではなく、多くの日本の中小企業がタイに進出しています。業種も多岐にわたります。製造業はもちろん、卸売・小売、その他のサービス業もたくさんタイに進出しています。

 したがって、タイ人にとって、日本は重要な経済パートナーなのです。

 今回の選挙で政権交代が実現しましたが、タイの有識者も高い関心を示しているようです。
 タイのチュラ大教授であるチャイワット・カムチュー氏の日本の政権交代に関する論考が、2009年9月4日付毎日新聞(朝刊)で紹介されていました。
 同教授の分析が、なかなかよく日本を観察しているなあ、と思える内容で感心しました。同氏の見解を以下にまとめました(前出の毎日新聞の掲載記事を参照)。

・日本の政治家は、外交のテクニックにたけているとはいえない。
・これまで日本の外交は、外務官僚にリードされてきた。
・民主党は、…野党から与党に立場が変われば責任が生じ、国際政治の現実に直面することになる。
・民主党政権が対米関係を中心とした日本の外交を大きく転換させるとは想像しにくい。

 チャイワット先生、おっしゃる通りです。よく日本のことをご存じで。さらに続きます。

・日本がこの地域(タイを含む東南アジア)で大きな役割を果たすには、まず国内経済を十分に回復させ、国内の安定を図ることが必要。
・東南アジアにとって、中国と日本は、どちらかを選ばなければならないゼロサムの関係ではない。

 民主党の皆さん、ここまで助言してくれてますよ。最後に、民主党政見のためにここまで忠告してくれています。

・鳩山政権も最初の数か月をどう乗り切るかが、生き残るかどうかのカギになるだろう。

 海の向こうのタイから有難い忠告ですねえ。民主党の先生方、期待しているのは日本国民だけではありませんよ。
 期待を裏切らないように頑張ってくださいね。