1.タイの法律事務所

 日本と違って、タイでは多くの法律事務所が株式会社形態で経営されています。
 日本の場合は、その多くが個人事業主として法律事務所を経営しており、私たちの事務所のように弁護士法人でやっているのはまだ少数です。それでも、株式会社で行うことは法律で禁止されています。なぜならば、株式会社は営利法人ですが、法律事務所を営利法人で経営することは弁護士業務の公益性を考えると好ましくないと考えられているからです。
 この点、タイ人は割り切りがいいですね。

 もうひとつ、日本と大きな違いがあります。
 日本では、弁護士資格を有しない者が法律事務所を経営することは、弁護士法で禁止されています。
 ところが、タイでは、弁護士でない人でも、弁護士を雇えば法律業務を行うことができてしまいます。
 そこで、日本人で弁護士資格を持たない者が、タイで株式会社を作り、タイ人の弁護士を雇用して法律業務を行わせているケースをよく見かけます。
 この場合、その日本人は、通常コンサルタントと名乗っています。
 そして、日系企業、特に中小企業は、この日本人コンサルタントを利用することが多いようですが、注意が必要です。どうしても、日本人同士で安心できるのはわかるのですが、実際に仕事をするのはタイ人弁護士です。しかも、日本人コンサルタントが雇っているタイ人弁護士の質に問題がある場合が多いのです。この点については、後述します。

2.タイ人弁護士の質

 タイでは、司法試験が日本と比較にならないほど簡単なため、弁護士の質にかなりの開きがあります。
 例えば、タイの首都バンコクに、ほとんど無試験に近い状態で入れる大学があるのですが、その大学の法学部出身者でもほとんどが弁護士資格を取得しています。大学の名前をここで書くのは問題なので差し控えますが、とにかくレベルが低いんです。
 そして、日本人コンサルタントが経営しているコンサルティング会社で働いている弁護士は、この大学の出身者がけっこういるんです。おそらく、ちゃんとした法律事務所に就職できなかったんだと思います。
 タイの有名大学、例えば、チュラロンコーン大学やタマサート大学出身の弁護士が、日本人経営のコンサルティング会社には就職しないと思います。
 したがって、日本人経営のコンサルティング会社に法律問題を依頼する場合には、この点についての注意が必要です。

 私としては、あまり学歴を云々するのは嫌なのですが、タイで弁護士を探す場合、原則として、チュラロンコーン大学かタマサート大学出身の弁護士にしたほうが無難だと思います。とにかく、弁護士のレベルの差が大きいですから。
 ちなみに、チュラロンコーン大学は、日本の東大に相当しますが、法律の分野ではタマサートがトップ校だと言われています。でも、あまり変わらないと思いますけどね。