1 日本の授権資本制度との違い

 日本には授権資本制度というのがありますが、タイには似て非なる制度に「登録資本金制度」というのがあります。

 日本の授権資本制度とは、定款で会社が発行可能な株式総数を定め、その4分の1以上を発行すれば株式会社を設立できます。その趣旨は、会社が発行できる株式総数の4分の1以上を発行しておけば、残りの4分の3については、取締役会に機動的に新株発行できる裁量を与えたのです。新株発行による資金調達の必要性等については、経営の専門家で構成される取締役会の裁量に委ねるのが妥当であるという考え方が横たわっています。

 これに対し、タイの登録資本制度というのは、会社が発行する株式総数を登録資本金として定め、会社設立時に全ての株式を発行するが、払い込みについては、25%以上で足りるとするものです。
 したがって、そもそも設立時に全ての株式を発行するので、新株発行についての裁量を取締役に与えるという趣旨ではありません。払い込むべき金額の75%相当を後払いにしているだけです。

 このように、形式だけからすると、日本の授権資本制度とタイの登録資本金制度は、全く異なる制度のように見えますが、その機能を掘り下げて見ると、結構似ていることに気づきます。
 というのは、残り75%の支払時期は、別段の定めがなければ、取締役の裁量により、取締役から払い込みの請求がなされたときに、払込義務が生じるのです。ですから、いつまで経っても取締役から請求がなければ、25%を払い込んだだけですんでしまうのです。
 そうだとすると、取締役に資金調達の裁量が与えられたのと同じ機能になります。残り75%のうち、取締役は、いつでも払込を請求することができるし、また、75%全部を払い込めと請求することもできれば、とりあえず10%の払込を請求することもできます。その時期や割合は取締役の裁量に委ねられているわけです。

2 BOIによる奨励企業の例外

 BOIにより投資奨励企業に認可された場合、通常は、特典ばかりなのですが、登録資本金制度における払込に関してはむしろ不利になります。
 というのは、会社設立段階では確かに25%で足りる点は同じなのですが、残りについては、操業開始時までに全額の払い込みを完了させなければならないからです。
 設立時から操業開始までの間ですから、極めて短期間の間に全額払い込まなければならないのです。
 BOIから認可を受けることを計画している企業は、この点について十分注意してください。