BOIに様々な特典があると言っても、それを享受するためのハードルは決して低くはありません。BOIの特典を受けるためには、BOI告示が定める次のような要件を満たす必要があります。
 (前回の記事はこちら:BOIの外資投資奨励政策(2)

1 付加価値要件

 BOIは、20%以上の付加価値を出せることを要件としています。付加価値の高さは、販売促進や人件費などの源泉となり、企業経営の安定性にも影響を与えることから、一定の水準の付加価値を要求しているのだと思われます。
 但し、電子及びその部品産業、農水産業、農水産加工産業については、業種の性質上、この水準の付加価値を維持することが困難だと思われることから、例外的な取扱がなされています。

2 自己資本比率

 事業の立ち上げ段階においては、負債を登録資本金額の3倍以下にすることが求められています。
 著しく高率の自己資本比率を求められているわけではありませんが、日本の企業の一般的な傾向を考えると、この水準はそれなりにハードルが高いという企業も多いのではないでしょうか。
 立ち上げ段階と言うこともあるので、BOIとしては、事業としての成長性よりも安全性をまず確保しておきたいということなのでしょう。

 ところで、タイの会社法の「登録資本制度」については、日本の会社法と制度が異なりますので、少し説明が必要です。
 タイでは、会社が発行する株式の総数を「登録資本金」として定め、設立と同時に全株式を発行しなければなりません。日本のように、会社の発行予定の株式総数の4分の1以上を発行すれば会社を設立できる、いわゆる「授権資本制度」というのはありません。
 但し、設立時に全額が払い込まれる必要はなく、各株式について25%を払い込めば、会社を設立することができます。つまり、設立時に要求されているのは、内金として25%相当額を払い込めということです。

 そうすると、BOIが負債額を登録資本金の3倍以下にすることを要求しているといっても、その登録資本金を全額払い込む必要がなく25%でよいのであれば、実質的な自己資本比率はずっと低いではないか、と思われた方もいると思いますが、残念ながらそうではありません。
 BOIでは例外的取扱がなされており、設立時には25%で足りますが、操業開始時までには全額払い込むことを要求されているからです。したがって、設立時から操業開始時までという極めて短い間に全額を払い込まなければなりません。

3 最低投資額

 BOIが求めている最低投資額は、土地代と運転資金を除いて、100万バーツ以上です。その時の為替レートにもよりますが、日本円にして、だいたい350万円というところでしょうか。
 この程度の投資額でもBOIの認可を受けることが可能なわけですから、中小企業の外国資本による投資も歓迎されていると言えるでしょう。

 ところで、いくら中小企業も歓迎するからといって、350万円なんてずいぶん少ないじゃないか、と驚かれた方もいるかもしれませんが、これは名目為替レートで換算したからです。
 日本とタイでは、物価水準が違いますので、通貨の購買力が違います。購買力評価で換算してみると、タイの物価は日本の5分の1程度と言われていますので、約1700万円投資したくらいのインパクトがあります。こういう時に円の強さは有り難いですね。

4 近代的生産方法

 BOIは、認可を受けようとする外資企業に対して、近代的生産方法・機械設備を使用することを要求しています。
 この点については、日本企業は心配しなくてもよさそうですが、若干注意が必要です。
 例えば、BOIは、10年超の中古機械の使用を原則として認めてはいません。BOIの立場では、10年を超える中古機械の使用は、近代的な生産ではないということのようです。

5 国際規格の取得

 これはあくまでも外資が1000万バーツ以上の投資を行う場合ですが、そのような外資企業に対しては、操業開始から2年以内にISO9000又はISO14000もしくはこれに相当する国際規格を取得することが求められています。
 もしこれができなかった場合には、法人所得税の免税期間が1年減少されてしまいますので注意が必要です。

6 環境対策

 公害防止対策を立てることが必要です。
 工業省が管轄しておりますが、工業団地(IEAT)に入居するのであれば、IEATの団地内事務所に問い合わせてください。