1 はじめに
タイは、原則として、外国資本のタイ国内への投資を奨励したいという政策を伝統的に維持しています。
そのアプローチは、まず「外国人事業法」で幅広く外資の事業を規制するという方法をとりながら、「投資奨励法」に基づいて設置された「投資委員会」(Bord of Investment、BOI)の認可事業を営む外資について別扱いとするとともに、BOI認可事業に対しては、税制上等の様々な特典を与えています。
法律的に言えば、外国人事業法が一般法で、投資奨励法が特別法という関係にあります。
したがって、一般論として言えば、外国人事業法の規制を受けながら事業を行うのではなく、投資奨励法に基づきBOIの認可を受けて事業を営んだほうが断然お得です。
2 ゾーン制
「特典」といっても、一律ではありません。
BOIは、タイ国内を大きく分けて3つのゾーンに分類し、各ゾーン毎に特典に差をつけています。
全てのゾーンをここに書くと大変な量になるので、いくつか例示すると、
第1ゾーン
バンコク、サムットブラカーン、ノンタブリ等(計6県)
第2ゾーン
ラッチャブリ、カンチャナブリ、アユタヤ等(計12県)
第3ゾーンの(1)
第3ゾーンの(2)よりも所得の高い県36県
第3ゾーンの(2)
ガラシン、ナーン、ウドンタニ等(計22県)
タイの地理に詳しくない人でも、勘のいい人はピンと来ると思いますが、どういう配列になっているかというと、所得が多くて発展している地域から順番に分類されているんです。
したがって、タイの首都バンコクは、言うまでもなく第1ゾーンに分類されています。
映画「戦場に架ける橋」で有名なカンチャナブリ、遺跡で有名なアユタヤは、第2ゾーンに分類されています。
第3ゾーンは、タイで最も遅れている地域です。そして、第3ゾーンをさらに2つに分け、一番の後進地域を(2)とし、それよりもマシな地域を(1)としました。
なぜこのような分類をしたのかというと、ゾーン別に特典に差をつけるためです。
最も特典が大きいのが第3ゾーンの(2)です。最も特典が小さいのが第1ゾーンです。
要するに、タイ政府としては、できるだけ遅れている地域に外資に投資してほしんですね。だから、遅れている地域に対する投資ほど優遇措置を施して、そのような地域への投資のインセンティブを高めようとしているのです。
3 BOIの規制対象事業
タイ政府は、2000年8月からBOIの認可対象事業に対する規制を大幅に緩和しました。
製造業について、2000年8月以前は、第1ゾーン、第2ゾーンの地域については、輸出80%以上の場合、外資100%もOK、輸出50%以上の場合は、外資過半数までOK、輸出が50%未満の場合には、タイ資本を51%以上にしなければなりませんでした。つまり、タイ政府は、できるだけ外貨を稼いでくれる企業を歓迎していたことがわかります。
しかし、2000年8月以降は、製造業に対して、ゾーンに関係なく外資100%も可能となっています。
農業、漁業、鉱業、サービス業については、2000年8月以前は、原則として、タイ資本51%以上でないと認可されませんでした。タイがマジョリティーを押さえていることが条件でしたので、外資系企業とはいえませんよね。
ところが、2000年8月以降は、農業、漁業、鉱業は従前と変わらず、タイ資本がマジョリティーでなければなりませんが、サービス業については一部を除き、外資マジョリティーでも可能となったのです。
次回はゾーン別の特典をもう少し詳しく解説したいと思います。お楽しみに。