皆様、こんにちは。

1 イントロ

 債権回収の法的手段といえば、訴訟や差押えをイメージされると思います。
 その前提として、債権者の方々は、上記の手段を執る根拠として何かしらの請求権を取得しているはずです。その請求権取得原因の一つとして契約が挙げられます。
 今回は法的手段を執る下準備という意味で、契約の作成に着目してみましょう。

2 形式面

 一見どうということはなさそうですが、注意しておく必要があります。

 たとえば、売買代金の回収をしたいという場合に、売買契約書を作らなかったので取引の内容が特定できないという問題がしばしば起こります。それだけでなく、契約書上の商品の特定が不十分であったために、相手方からその商品は知らないなどと反論されることがありえます。

 商品名や製造番号などはきちんと記載し、できれば正式な資料や写真などを添付させるといった手間をかけておいた方がよいでしょう。信用調査を含め住民票・戸籍謄本や商業登記簿謄本を取り寄せて、相手方の情報のチェックも念のためしておきましょう。

 また、継続的取引を行うならば、個別の取引についてどのように内容を特定するのかについて条項を定めておきましょう。

3 内容面

 所有権留保、期限の利益喪失、連帯保証人などはご存じの方が多いかと存じます。連帯保証については、継続的取引であれば連帯根保証にしないと個別契約ごとに保証契約を締結しなければならなくなるので、検討の必要があります。

 金銭の支払いについては公正証書による強制執行が可能です(民事執行法22条5号参照)ので、契約書内に強制執行認諾文言入りの公正証書作成に応じる旨の条項を入れて公正証書化に応じさせることで、裁判手続を経ずに強制執行手続きを申し立てることができます。

 他にも、遅延賠償金の利率を法律の範囲内でなるべく高めに設定して、他の利率が低い借入先等よりも先に支払いを済ませたいという気持ちにさせることも考えられます。

 あとは、裁判管轄を自分の地元の地方裁判所に指定してしまいましょう。特に、相手方が遠隔地の場合、訴訟がより手間になるので、多少きつくても支払ってしまおうという気持ちに(少しですが)傾きやすくなります。

 実際のところは取引の内容などを踏まえて、当事者間で柔軟に取り決めていくことになります。先のことはわからないとはいえますが、予め定めておけば争いの種を減らしたり後の面倒を避けたりすることができるので、スムースな債権回収につながりやすいのです。

 今回もお付き合いいただきありがとうございました。