1 タイの投資環境

 最近、中国への投資ブームのせいで、対外投資というと中国というイメージが定着しています。
 しかし、そんな時期だからこそ、私としては、タイへの投資を強く推奨します。別に中国への投資がいけないというのではありません。これからは日本の企業にとって、中国が重要な国になることは疑う余地がありません。
 でも、タイには、中国と共通するメリットと、中国にはないメリットがあります。以下に述べるように、タイには日本人・日本企業が投資する投資環境が整っています。

 まず、中国との共通点は、はやり物価の安さでしょう。
 タイは、ASEAN諸国の中では物価の高い国です。隣国のカンボジアやラオスと比べると、ずっと高い。でも、日本の物価と比較すると、だいたい3分の1~5分の1くらいを見ておけばいいでしょう。例えば、タクシーの初乗り料金は、35バーツ。日本円で、約120円です。タイの屋台でヌードルを食べると、25バーツ。日本円で、約80円です。気になる人件費ですが、大卒の初任給がだいたい月1万バーツ(額面)ですから、日本円で月額3万円ちょっとです。
 投資するうえで物価は重要です。かつて、タイで成功した日本人の社長さんが、私にこんな話をしてくれました。

 「金崎さん、1万円を2万円にするのと、1億円を2億円にするのと、どちらが簡単だと思いますか。答えは、1億円を2億円にするほうです。なぜなら、1万円は誰でも持っていますが、1億円を持っている人は少ないからです。だから、他人よりも有利なビジネスができるんです」

 そして、この社長は、日本円の強さをあげて、タイでは少ない投資で大きな投資効果をあげられると力説します。

 「1億円を投資するといっても、大変でしょう。しかし、タイでは、3000万円の投資で1億円投資したのと同じくらいの効果があります。なぜなら、物価が安いからです」

 物価が安いというのは、誰にとっての物価でしょうか。実は、タイ人にとって、タイの物価は決して安くはありません。日本人をはじめとする外国人にとって安いんです。特に、日本はおそらく世界一物価の高い国です。したがって、どこの国の外国人よりも有利です。これは、日本円をはじめとする先進国の通貨の実質為替相場(=購買力)が強いからです。  したがって、タイはまだまだ物価の低い国なので、日本人が投資した場合、有利になります。

2 タイにハマる日本人

 そうはいっても、物価の低さは、タイに限った話ではありませんね。中国だって物価は低いですよね。タイや中国以外にも、世界中に物価の低い国はたくさんあります。  しかし、タイには、他の国にはなかなか見られない好条件が揃っています。その好条件とは以下の通り。

(1) 親日的である。
(2) 経済や法律のインフラが進んでいる。
(3) 日本人や日本企業がたくさんある。
(4) 日本文化が浸透している。

 まず筆頭に挙げられるのは、タイ人の親日的な態度です。これは、日本人や日本企業が進出する際に、かなり重要なファクターになると思います。この点では、中国との差は大きいですね。戦後、日本製品の不買運動が起こったことがありますが、過去のことです。現在のタイでは考えられません。
 経済や法律のインフラが進んでいる点も評価できます。タイは仏教国であると同時に王国ですので君主国家です。しかし、いわゆる立憲君主制ですから、政治システムは民主政治です。経済システムも資本主義です。加えて、経済・法律面のインフラからいっても、発展途上国の域を脱っして、新興工業国といえるでしょう。
 日本人や日本企業がたくさんあることも大きな魅力です。タイのバンコクの日本人会は、おそらく世界最大規模だと思います。日本人がたくさにるので、タイでの生活にもすぐになれます。生活に必要な情報がすぐに入るからです。また、その影響で、日本食レストランもたくさんあります。タイ料理は確かにおいしいですが、日本食がなつかしくなったら、いつでも食べれます。
 最後は、日本文化の浸透です。とはいっても、サブカルチャーですが…。
 音楽でもドラマでもアニメでも、日本のものがすごく流行しています。これがタイ人の親日性に拍車をかけているんでしょうね。

 こんなお国柄ですから、タイに赴任した日本人駐在員の人たちが、日本の本社から帰国を命じられたときに、「いやだ、帰りたくない」といっていたのを何度も耳にしました。
 極端な人になると、日本への転勤を命じられると、その時に退職していまう人もいるくらいです。

 どうですか。ここまで聴くと、タイに投資したくなりませんか(笑)。