1.動産担保融資

 今、地方の金融機関で、動産担保融資が広がっているそうです。
 動産担保融資は、これまで不動産担保融資に偏りすぎた結果不良債権の山を築いた反省もあって、地方の金融機関を中心にひとつの担保ツールとして注目されています。
 金融庁の調べによると、2005年には100億円にも満たなかった動産担保融資ですが、2008年には585億円に拡大。件数も2005年は100件にも満たない規模でしたが、2008年には1000件を越えております。わずか4年で急成長していることがわかりますね。

 さて、動産担保融資の例をいくつか挙げると、商工組合中央金庫と福井銀行は、昆布加工品の製造販売業者に対して、「昆布」を担保に2億5000万円の融資枠を設定したそうです。
 また、青森県のみちのく銀行は、「リンゴ」を担保に融資枠を設定。
 東北銀行は、「鋼材」を担保に岩手県の建設業者に2億5000万円の融資枠を設定しています。

 これらの動産担保融資を設定した金融機関にとっては、動産を担保にとることによって、融資先の企業の在庫管理を把握することができ、これまで以上に融資先の経営状態を把握しやすくなったというメリットもあるようです。

2.中小企業の債権回収と動産担保

 動産担保融資の拡大によって、中小企業の資金調達方法が多様化したといえるので、それだけ資金調達がしやすくなったといえます。

 ところで、動産担保融資は、あくまでも「融資」ですから、企業が金融機関からお金を借りる場合の話です。
 しかし、動産担保融資という仕組みが発達して担保評価の方法が確立されてくると、これからは、中小企業の売掛債権を担保する手段としても使える可能性があります。
 つまり、中小企業が取引の際に相手から動産を担保に取るのです。もし、売掛金債権が不良債権化しそうになったら、この動産担保から、売掛債権の一部を回収するわけです。
 中小企業間の取引で、売掛債権のために担保を取るという発想自体がありませんでした。
 これは、今まで担保とは金融機関がとるものだというイメージが定着していることや担保といえば不動産というイメージが強いため、担保制度は金融機関の債権回収のツールとして位置づけられてきたことが背景にあったと思います。  しかし、中小企業が取引の際に担保をとってもいいはずです。むしろ、中小企業こそ、担保制度を活用した債権回収スキームを確立しないと、会社の運命にかかわるとさえいえます。なぜならば、多くの中小企業のとって、売掛債権の不良債権化は、倒産の危機を意味するからです。

 これから中小企業のクライアントから債権回収のご相談を受けた場合には、動産担保の活用を提案していきたいと思います。