こんにちは、弁護士の森山です。
 先日、ある会社の方から、中小企業緊急雇用安定助成金についての質問を受けました。助成金というのは、政策の問題ではあるのですが、せっかくの機会なのでここでご紹介しようと思います。

 中小企業緊急雇用安定助成金は、景気変動、産業構造の変化、その他経済的理由により事業活動の縮小を余儀なくされた場合に、その雇用する労働者を対象に休業等を実施する事業主の方に対して、休業等にかかる手当・賃金等の負担の一部を助成することにより、労働者の失業の予防や雇用の安定を図る制度で、雇用調整助成金の助成内容等を中小企業事業主向けに拡充した制度です。

 要するに、リーマンショック等の景気の激動により、休業等をせざるを得なくなった中小企業に、政府が休業手当等を援助して、今まで会社に尽くしてきた社員のクビ切りを防止するものです。

 ただ、この助成を受けるためには、一定の要件を満たす必要があります。
 まず、適用の対象は、①景気の変動及び産業構造の変化その他の経済上の理由により、②事業活動の縮小を余儀なくされた③中小企業の事業主です。

 したがって、①から、例年繰り返される季節的変動による事業活動の停止・縮小は対象外、事故や災害の被害の場合も対象外です。また、②の事業活動の縮小にも要件があり、売上高又は生産量などの事業活動を示す指標の最近3ヶ月分の月平均値がその直前の3ヶ月又は前年同期と比較して5%以上減少していること(ただし前期決算等の経常損益が赤字であれば5%未満の減少でも要件を満たす)が必要です。③中小企業についても、業種により資本金や従業員数に制限が設けられています。

 さらに、受給するために必要な要件として、労働局又はハローワークに対する事前届出が必要で、その他事業所において就業規則等の書類や出勤簿等の書類を整備・保管していることも必要です。また、前述の事業活動の縮小の判定のため、月次決算書、損益計算書、総勘定元帳の提出も必要なようです。

 労働者の雇用維持のため、かなり有用な制度だと思いますが、要件や書類等複雑なところもありますので、事前に最寄りの労働局やハローワークへお問い合わせいただくのがよいだろうと思います。

 なお、話題の(と言っても、最近マスクをしている人をめっきり見なくなりましたが)新型インフルエンザの影響による客数・受注量等の減少を理由に休業等を行う事業所を対象に、要件が緩和された特例措置も最近設けられています。

弁護士 森山弘茂