1.中小企業のための直接金融
通常、会社が取り得る資金調達の手段は、大きく分けて、次の2つの方法があります。
(1)新株又は社債を発行する。
(2)銀行等の金融機関から借り入れる。
そして、(1)を直接金融、(2)を間接金融と呼んでいます。
上場企業などの大企業は、この両者を資金調達手段として活用できるのですが、中小企業の場合、直接金融で資金調達をしようと思っても、引き受け手が見つかりません。
したがって、専ら(2)の間接金融、すなわち、銀行などの金融機関から借り入れる以外に資金調達の手段がなかったのです。
しかしながら、今は、銀行がなかなかお金を貸してくれない時代です。貸し渋りや貸し剥がしがなされているか否かはともかく、銀行の財布のひもが堅いのは事実のようです。
そこで、最近、中小企業の資金調達として、様々な手法が考え出されています。
今回は、その中の「少人数私募債」について簡単に解説したいと思います。
2.少人数私募債とは
少人数私募債とは、簡単に言えば、会社が親族・友人・取引先などの限られた少人数を対象に発行される社債です。
上場企業が発行する通常の社債は、不特定多数の投資家を対象としている点で、「小人数」ではありません。また通常の社債は、証券取引所という公のマーケットで取引されるものであり、私的に募集されるものではありません。
これに対し、少人数私募債は、あくまでも少人数を対象に、公のマーケットではなく私的に引受人を募集するものです。
少人数私募債には、
① 募集人数は49名までで、不特定多数を対象に勧誘してはならない。
② 発行金額は、1億円未満でなければならない。
③ 市場で流通することを予定していないので、譲渡制限を付さなければならない。
などといった制約があります。
このように、通常の社債とは異なる制約がありますが、少人数私募債も社債であることにかわりはありませんから、いずれ返さなければならないお金です。株主のように「出資」してくれているわけではありませんから、そこは勘違いしないでくださいね。
3.少人数私募債のメリット
少人数私募債のメリットとして言われているものをいくつか紹介しておきます。
・社債の償還期限は、通常3年から5年なので、長期間元本の返済が不要になります。
・利息の支払いも、毎月ではなく、年に1回ないし2回の支払になります。
・出資ではないので、経営に対する干渉が小さくなります。
・少人数私募債を発行できたということで、会社としての信用力がアップします。
・少人数私募債の利息支払いについて、補助してくれる自治体があります。
例えば、東京都だと文京区と足立区。
・社債利息の税金は、20%の源泉分離課税となるので、高収入の人から資金を調達しやすくなります。
4.少人数私募債の限界
少人数私募債は、あくまでも借金ですから、会社の経営が順調であれば財務レバレッジが効きますが、逆に業績不振に陥っているときに償還時期をむかえると、持ち出しで大金を準備しなければならない羽目になります。
また、資金調達手段としても、限界があります。
発行額に1億円未満という制約がありますが、実際に資金調達できる金額は、せいぜい5~6,000万円がいいところです。1,000万円とか2,000万円程度の少人数私募債も珍しくありません。
資金調達先が、親族や友人もしくは取引先という、社長さんの人間関係の範囲に限定されるからです。
したがって、例えば、中小企業であっても、数十億円の年商規模で億単位の資金調達を必要とする企業にとっては、実際に利用する機会は少ないと思います。