回答
近年、外国人の方が日本へ滞在する機会も増えており、ルームシェアを希望する賃借人も現れてきているように思われます。海外では、賃借物件においてルームシェアという形式は珍しいものではなく、日本人よりも外国の方に受け入れられやすい形態のようです。
ルームシェアを行う場合の賃貸借契約の締結方法ですが、すべての賃借人を1枚の契約書にまとめてしまってもかまいませんし、人数分の賃貸借契約を締結する方法でもかまいません。いずれの場合であっても、共同賃借人がどれだけ存在しているのか、占有部分をどのように特定するのかという点が重要となります。なお、複数の賃借人が同一の契約書にサインする場合には、各人の個人情報が共有されることにつながりうるため、その点についての同意も各賃借人から得ておくことが適切でしょう。
ルームシェアの場合、賃料の負担をどのように整理するのかということも問題です。物件全体の賃料を全賃借人が連帯して負担するものとして、各人がどれだけ負担するのかについては内部の賃借人らに委ねるのか、各人の個室に相当する賃料を定めたうえで、共用部分の利用に関する共益費を定める方法も考えられます。
前者の方法による場合は、すべての賃借人を共同賃借人として合意する方法を取り、賃料の未払いが生じた場合には、全員に対して全額を請求することができますし、全員への明渡し請求を行うことが可能になります。この場合、賃貸物件の全体に対して明渡しを求めることになるため、未払いが生じた場合の対応は比較的単純になるといえます。
一方、個室ごとに賃貸借契約を締結した場合には、ルームシェアを行っている他の賃借人とは連帯責任というわけではないため、一部の賃借人に対してのみ明渡し請求をしなければなりません。ところが、強制執行を行う際に、個室部分については、強制執行を行える状態になったとしても、当該個室へ入るまでに通らなければならない共同利用部分については、他の賃借人らの同意がなければ強制執行ができなくなる恐れがあります。このような場合に、滞納が生じてしまうと、その解決のための訴訟手続きが実効性を欠く恐れがあり、賃料滞納に対する対応を困難にする恐れがあります。
また、極端な例ですが、一度強制執行を行うことができたとしても、他の賃借人が共用部分へ招き入れてしまえば、再度の強制執行を行うことはできないと考えられています。したがって、個室ごとに賃貸するルームシェアについては、強制執行の実効が困難である恐れがあることには十分留意しておく必要があります。このような事態に備えて、他の賃借人に対する強制執行についての協力義務を定めておくほか、他の賃借人に対する強制執行を妨害した場合には、賃貸借契約を解除できる旨定めるなどの方法で、強制執行の実効性を少しでも確保するような契約内容が望ましいと考えられます。
そのような意味では、共同賃借人方式の方が、万が一の場合に解決はしやすいといえます。また、個室ごとに賃貸借契約を結ぶ場合であっても、他の賃借人と連帯保証関係を成立させておくなど、賃料滞納が生じた場合に、明け渡しを強制する以外の選択肢を増やしておく必要はあると考えられます。