一方、裁判所は、倒壊の原因となった阪神淡路大震災については、地震の規模として「わが国の観測史上一、二を争う最大級の地震」(判決当時)と認定しているのですが、たとえ、そのような地震であったとしても、上述の「設置の瑕疵」さえなければ、被害の最大の原因となった1階部分が完全に押しつぶされる形での倒壊は生じなかったと認め、建物所有者は、地震という「自然力」と競合して被害を生じさせたとして、生じた損害の5割の範囲で賠償を行なうべきと判断しています。
このように、十分な耐震性を有しない建物を漫然と所有し続けた結果、崩落等が生じて被害が発生した場合には、建物所有者は、その被害に対する賠償責任を肯定される可能性があり、この場合には、賠償すべき金額は、決して低額なものにはならないものと考えられます。そのため、建物所有者としては、耐震性が疑われる建物に対しては、耐震補強工事や建て替え等の適切な対応を行なう必要があると考えられます。