先日は鳥取で、春には熊本で大きな地震が発生しており、現在、我が国では、地域を問わず、震災に見舞われるリスクが有ると考えられます。鳥取の地震の際にも、少なからぬ数の建物について倒壊のリスクがあるとの指摘がされましたが、実は、震災クラスの大規模な地震による倒壊であっても、建物所有者には、これに基づく損害の賠償責任が生じる可能性があります。
神戸地裁平成11年9月20日判決において、裁判所は、いわゆる阪神淡路大震災により、神戸市東灘区に所在するマンションの1階部分が潰れて倒壊したことで人が死傷したことについて、建物所有者に対して、被害者7名合計で1億円を越える損害賠償義務があることを認めました。
当該事案におけるマンションは、構造からして耐震性に疑問がある状態であったうえ、実際の施工結果としても、コンクリートブロック壁と柱や梁が十分に緊結されていない「軽微とは言えない不備がある」建物であったと認定されているのですが、このような建物は「建物として通常有すべき安全性」を有していなかったとして、民法が定める工作物責任の要件である「設置の瑕疵」があると認められました。