相談内容
アパートの構造上、アパートの1階に設置された換気扇フードが隣家の窓と向かい合わせになっています。隣家の住民から、換気扇フードから悪臭がするため、設計を変更して、改善してもらいたいとの要望がありました。
しかしながら、既にアパートには入居者がいるため、設計を変更する方法で改善することはできない状態にあります。
隣家からの要望に対してどのように対応すべきでしょうか?
回答
隣人とのトラブルにおいては、相談内容のように悪臭を原因とするようなものもあります。臭いの問題というのは人によって感じ方も異なるため、トラブルになると解決することが難しい部類の紛争になります。
悪臭が生じていることを根拠に設計の変更を求める権利が隣人にあるのでしょうか?意外に思われるかもしれませんが、実は、請求する権利自体は認められる可能性があります。裁判例においては、悪臭など生活環境を害するような行為に対しては、人格権に基づく妨害排除請求ができるものとされており、この権利に基づいて、悪臭による被害を防止する措置をとるように請求することができます。例えば、悪臭が風等によって隣家に向かってこないように、換気扇フードの向きを変更することや壁を設けたり、それ以外にも悪臭が生じにくくなるようなフィルターを付けたりするといった方法が想定されます。
しかしながら、冒頭で申しあげたとおり、人によって感じ方が異なる悪臭の問題には、どんな場合でも妨害排除を求めることができてしまっては、対策を行う側に過剰な負担を求めることになるため、受忍限度を超えた場合に限って、人格権に基づく妨害排除請求が認められます。
受忍限度の程度は、一般人を基準として検討されますので、被害を申し出ている当事者だけではなく、悪臭防止法などにおける規制数値の客観的要素を参考にし、継続性や頻度、当該地域における用途などを考慮して判断されます。そして、被害を防止する措置をとらなければならない受忍限度を超えた悪臭と認められるためには、生活環境を著しく侵害するような程度に至っていなければならないと考えられます。
まずは、ご相談における悪臭の程度を客観的に計測したうえで、防止措置の必要性について検討していくことが重要であると思われます。