相談内容

 あるマンションに入居している賃借人から、隣人の賃借人に関するクレームがありました。マンションの玄関部分には小さな自転車2台程度や傘立て程度であれば置くことができるスペースがあるのですが、そこに大きな荷物が置かれてしまって放置されているとのことです。

 早速、撤去の要請に行ったのですが、共用部分にあるスペースであり、荷物置場として利用することが可能であると説明を受けたから撤去する必要はないと言って取り合ってくれません。共用部分である以上、利用を認め続けるほかないのでしょうか?

回答

 賃貸マンションにおける共用部分の利用についての権利関係は、明確なものではない場合が多く、相互に迷惑をかけない範囲であれば、特段トラブルになることはありません。しかしながら、共用部分である廊下にゴミを出しっぱなしにしてしまって、悪臭をさせる場合や通行を妨げるような荷物を置く場合や、中身のわからない荷物に近隣の住民が不安を感じるなど、トラブルが生じるきっかけとなることがあります。

 共用部分の利用については、一般的には、共同利用する者の利用を妨げない範囲で、自由に利用することができると考えられますが、利用の程度が近隣住民の受忍限度を超えるような場合や迷惑が及んでいる場合などには、他の近隣住民の利用を妨げる行為が賃貸人と当該賃借人の間の信頼関係を破壊し、賃貸借契約の解除原因となる場合があります。

 とはいえ、どこまでの共同利用が許されているのかについてまで、明確にされていることは少なく、せいぜい、「近隣への迷惑行為を行ってはならない」といった解除事由が定められているにとどまることが多いでしょう。

 ご相談のような事例の場合は、単に大きな荷物の撤去要請に応じないというのみでは足りず、現実に近隣の住民の利用を阻害する程度が高く、その期間が長期にわたり、再三にわたる撤去要請に応じないといった事情がなければ、賃貸借契約を解除することはできないと考えられます。

 なお、共同部分の利用については、契約書で定める例は少ないですが、居住に当ってのしおりやマンションの利用ルールとして住民たちに共通のルールを浸透させておくことも紛争予防には重要であると考えられます。