相談内容

 居住用マンションの1室を貸し出したところ、ベランダに野鳥がやってくるというクレームがありました。

 具体的には、洗濯物を干すと汚されてしまうので外に干すことができないことや糞尿などが多く不衛生であり、掃除に著しく手間がかかっているため、賃料を減額してもらわなければ、住み続けることは到底できないと言われています。

 ベランダは、元々、外に開放された構造になっているため、野鳥がやってくる可能性は否定できませんが、賃借人の要求に応じなければならないのでしょうか。

回答

 家賃の減額を正当に行うには、賃借人が賃貸人に対して損害賠償請求が可能であるか、賃貸部分の一部が使用不能となっていることが必要です。

 本件では、ベランダの利用に支障が出ていますが、使いづらさはあるものの、使用不能とまではいえないと考えられます。

 それでは本件で、賃借人は賃貸人に対して、損害賠償請求が可能といえるでしょうか。

 賃貸人は賃借人に対して、使用に適する状態で賃貸物件を引き渡し、必要に応じて修繕する義務を負担しています。ベランダに野鳥が訪れることが、これらの義務に違反しているか否かが問題となります。

 確かに、野鳥が訪れることで、洗濯物の汚れが生じ、掃除の必要性も増加すると考えられますが、これは賃貸人の管理が可能な事項でしょうか。

 賃貸物件への生物の侵入という点で共通する裁判例として、飲食店を経営している店舗にネズミが頻繁に侵入してくるという事例があります。ネズミの侵入について、賃借人の使用状況との相関関係から生じる事態であり、賃貸人の管理の及ばない事項であることを理由に、賃貸人がこれに対処する義務を否定しました。

 この裁判例を参考にすると、野鳥の侵入についても、賃貸人の管理の及ばない事項として、賃貸人が対処しなければならない義務はないといえそうです。ただし、野鳥による迷惑について、賃借人による野鳥対策(例えば、ベランダにネットを張ることを許可するなど)を一定程度許容する必要はあるものと思われます。