今回は、報道等で一般に使用されている用語と、法律家が使用している用語との間に齟齬がある例を紹介したいと思います。

1.「再逮捕」の意味

法律家の世界では、同一犯罪事実で再度逮捕することをいいます。

ですので、異なる犯罪事実、例えば窃盗で逮捕した後に、放火で逮捕することを法律的には再逮捕と言いません。

これに対して、マスコミでは、別の犯罪事実でも、逮捕が繰り返されると、再逮捕といわれます。ですので、窃盗で逮捕後、放火で逮捕することも再逮捕と言って報道されています。

刑事訴訟法では「一罪一逮捕・勾留の原則」というものがあり、同一犯罪事実で逮捕・勾留していいのは原則一回というルールです。さもないと、逮捕後48時間で検察官に送致、その後24時間以内に起訴・不起訴を決める、かつ、警察・検察をあわせて72時間を超えてはいけないという厳格な時間規制の意味がなくなってしまうからです。このルールがあるので、再逮捕・再勾留は原則認められないわけです。

2.「容疑者」と「被疑者」

報道や、一般的な用語では容疑者という表現が用いられることが多いですが、刑事訴訟法にはない言葉です。名探偵コナンも「容疑者は2人・・・」とかって言いますよね。

刑事訴訟法では、「被疑者」という用語が用いられます。被疑者が起訴されると「被告人」と呼ばれます。

3.「被告」と「被告人」

上記のように、刑事訴訟法上は、起訴された後は「被告人」と呼ばれますが、マスコミ用語では「被告」と呼ばれることが多いです。

しかし、法律家の世界では「被告」というと、民事訴訟手続における訴えられた当事者のことを指し、刑事訴訟手続きにおいて用いる用語ではありません。

弁護士 水野太樹