自動車社会の現代、「世の中の交通事故というものは、どうしても一定程度は生じてしまうものだ。」などと言われることもあるようです。さらに、それに輪をかけて大量発生するのが、もっと軽微な交通違反、つまりスピードオーバーだの一時停止違反だの、シートベルト装着義務違反だのといったものです。
これらは、道路交通法などの規制に反し、罰則も定められています。しかし、とにかく大量発生するものなので、一々通常の刑事手続きに則って処理をしていたのでは、捜査機関や裁判所はパンクすることとなってしまいます。とはいっても、数が多すぎるので刑事処理などやってられるかと任務放棄をするわけにいきませんし、関係機関の負担にならない程度に検挙数を抑えると不真面目だ、不公平だと文句が出てきかねません。
そこで、実務上では、次のように、交通違反を検挙・処理しつつ、関係機関の負担を抑える工夫が用いられています。(これはそのまま、違反者の負担軽減にもなっています。)
1.交通反則通告制度
これは、交通違反の中でも比較的軽微なものについては、違反者に反則金を納める機会を与え、反則金が納められれば、その後は公訴の提起や家裁の審判に付さないとするものです。交通反則告知書は、一般的には「青切符」と呼ばれています。
この制度においては、反則金を納めた後は交通違反について争う機会がなくなるため、その点に不服がある場合には注意が必要です。
2.三者即日処理方式
交通違反の程度がやや重く、交通切符(一般には「赤切符」と呼ばれています。)を交付された場合には、上記の交通反則通告制度の対象とはなりません。そのため、刑事手続きで処理されることとなりますが、交通切符が切られる場合も数が多いため、警察や検察での捜査→裁判→罰金という正規の手続きをとっていたのでは時間も人手も足りません。何度も呼び出しを受ける違反者の負担の問題もあります。そのため、交通切符の交付に伴い、違反者へ裁判所への出頭とその日時を告知し、同日、裁判所に警察・検察・裁判所の三者もやってきて、取調・裁判・罰金の納付を一日で済ませる運用となっています。これを処理する裁判所は「交通裁判所」などとも呼ばれ、裁判所に行くと「交通違反者はこちら」と書かれた案内板が出されていたりします。
なお、上記の交通反則通告制度において反則金の納付を拒んだ場合にも、この処理方法で処理がなされる場合があります。