刑事事件においては、前科前歴があるというのは、処分の重さを決める上で非常に不利になる事由です。その中でも、特に、前にやらかしたことと同じようなことを再度繰り返した、いわゆる同種前科については、非常に厳しくみられることとなります。
同種前科が特に厳しい目で見られる理由は、まずは本人の反省に対する疑問が感じられるからです。ほとんどの場合、以前の事件の時に、取り調べでまたは公判廷で、「今後はこのようなことを絶対に繰り返さない。」と約束しているはずです。それにもかかわらず繰り返すのだから、また反省の弁を述べたところでその言を信じられない、すなわち反省が認められないという風に解されても仕方のないものです。
あとは、何度も同じことを繰り返す人物については、当該犯罪に対する規範意識の欠如、そして累犯性・常習性が強く疑われるからです。この点については、薬物事犯や性犯罪において強く表れることの多い点でしょう。同じようなことを繰り返した人物は、これからも同じことを繰り返す可能性が高く、したがって厳しい処分をもって矯正する必要性があると解されることとなります。
一度目の時に反省の念を有したのであれば、そのことをよくよく肝に銘じないと、同じようなことを繰り返して厳罰に処されることになるのです。
以前、飲酒運転での執行猶予が明けた後に再度飲酒運転をして事故を起こしたという案件を手がけました。この時は、示談なども行なってやれるだけのことはして、結果執行猶予としてもらうことができました。ただ、判決言い渡しの時に裁判官が依頼者へ、「今回は、執行猶予とすべきか散々迷った。正直、これに執行猶予を認めない裁判官は多くいると思う。今回はあなた自身の反省の言に加え、被害者との示談も出来ていること、保険会社の対応もあること、身内の方が情状証人となってくれていることなど諸般の事情を酌んで執行猶予としたが、本当に次はないよ。」と、厳しめの口調で釘を刺していました。猶予期間も長めだったので、やはり厳しい目で見られているなということを実感しました。