1 恐喝罪とは?
刑法249条は、
「1 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。」
と規定されております。
皆様も耳にしたことがある恐喝罪の規定ですね。今回は、恐喝罪と民事上の権利行使に関してお話しようと思います。
2 そもそも恐喝って何?
刑法249条に規定している「恐喝」とは、財産交付に向けて行われる脅迫または暴行であって、その反抗を抑圧するに至らない程度の行為をいうものと考えられております。
暴行・脅迫が、その反抗を抑圧するに至る程度の行為だった場合には、恐喝罪ではなく、強盗罪(刑法236条)を構成することになり、その判断は客観的になされます(最高裁判所判決昭和24年2月8日刑集3巻2号75頁参照)。
つまり、財産交付に向けて暴行・脅迫を手段とするもので、その程度が反抗を抑圧するに至らない程度の行為が恐喝行為に当たり得るのです。
財産交付に向けられたものか、相手が畏怖しなかった場合にはどうなるか、財産交付がなかった場合はどうなるか等の議論もありますが、今回は、権利行使と恐喝罪という観点から、恐喝罪について解説致します。
3 権利行使が恐喝罪にあたるのか
最高裁判所昭和30年10月14日判決は、権利行使と恐喝罪について、 従来の判例を踏襲し、「他人に対して権利を有する者が、その権利を実行することは、その権利の範囲内であり且つその方法が社会通念上一般に忍溶すべきものと認められる程度を超えない限り、何等違法の問題を生じないけれども、右の範囲程度を逸脱するときは違法となり、恐喝罪の成立することがあるものと解するを相当とする。」と判断しております。
かかる裁判例は、債権取立のために執った手段が、権利行使の方法として社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を逸脱した恐喝手段である場合には、債権額のいかんにかかわらず、かかる手段により債務者(義務者)から交付を受けた金員の全額につき恐喝罪が成立するものと判断されております。
本来、債権者(権利者)は、債務者(義務者)に対して、例えば「貸したお金を返してください。」「物を売ったので代金を支払って下さい」等の権利行使を行うことができます。ただし、権利行使の方法が行き過ぎた場合には、上記のとおり犯罪にあたる可能性もあるのです。
例えば、債権者(権利者)の要求に応じないときは、債務者(義務者)の身体に危害を加えるような態度を示す行為は、社会通念上一般に受任すべき限度を超えたものと判断される恐れが生じます。
4 行き過ぎてしまう前に、ご相談を
以上のように、権利行使が行き過ぎた場合には、当該行為が恐喝罪や強盗罪を構成し得る場合があります。過去の裁判例には、上記のとおり、行き過ぎた権利行使に対して、実際に犯罪が成立すると判断されたものもございます。
当事者同士でのやり取りで、相手の態度に業を煮やしてしまい、つい、行き過ぎた行為に出てしまったという例もございます。他方、権利がこちらにありながら、それをどのように行使すればよいのかわからないということで、実際の権利実現が図れないことは、債権者(権利者)の不利益に他なりません。
そこで、相手方から債権回収を図りたいが、相手が無視する、誠実に対応しない等のご相談についても、お気軽にお問合せ下さい。