3 「窃盗罪」における「財物」
まず「財物」ですが、刑法上には「電気は、財物とみなす」(刑法245条)との規定があるため、窃盗罪において「電気」が「財物」に含まれることは争いがありません。このため、「他人の家のコンセントに自分の家電をつなぎ電気を使う行為」も電気という「財物」を盗む行為にあたることになり窃盗罪が成立するということになります。
4 「窃盗罪」における「窃取」
次に「窃取」ですが、法律上は「他人の占有する財物を、占有者の意思に反して自己の占有に移転させる行為」とされています。誤解を恐れず言い換えると、「他人が管理している物を、管理している人間の意思に反して、自分のものにしてしまうこと」を言います。
つまり、「ご自由にお持ち帰りください。ただしおひとり様1点限りとさせていただきます」というような注意書きのある場合に、一人で何点も持って帰ってしまう行為は、場合によっては窃盗罪の「窃取」行為にあたりうることになります。
さて先ほどあげた事例についても、パチンコ店は通常の方法で遊んで出すことしか認めていないわけですから不正な手段でパチンコ玉を出す行為は、パチンコ玉を管理しているパチンコ店の意思に反してパチンコ玉を自分のものにする行為にあたり「窃取」になるわけです。
また、ATM内の現金は銀行が管理している「財物」です。そして、銀行口座は口座の名義人か名義人の口座から正当な理由でお金を引き出す人間が使うことを目的としているため、犯罪目的で他人の口座を得た人間がお金を引き出す行為は銀行の意思に反することになります。よって銀行の現金を「窃取」したことになります。
なお、これと同じ理屈で他人の家に忍び込んでキャッシュカードを盗んだ人間が、そのキャッシュカードを用いてATMで現金を引き出した場合、キャッシュカードを盗んだ行為とは別に銀行から現金を引き出した行為についても窃盗罪が成立する可能性があるのです。
非常にシンプルに見える窃盗罪でも、思いのほか複雑な話があるのです。