犯罪の中には、その犯罪が成立するための主観的要件として故意が要求されるものがあります。例えば、殺人罪が成立するためには殺意が必要です。殺意と聞けば、殺してやろうという意図がすぐに思い浮かびますが、刑事裁判での殺意はそれだけにとどまりません。

 刑事裁判での故意とは、構成要件的結果発生に対する認識・認容のことを言います。簡単に言えば、人が死ぬ、ケガするなどの結果が発生する可能性があると感じながら、そうなってもよいと思うことです。
 これは行為者の心理状態を要件とするものですが、人が死ぬとは思わなかった、物を盗むつもりはなかったなどと単に主張するだけで犯罪は成立しないのでしょうか。それがまかり通れば故意を必要とする犯罪は成立しえなくなるので、そんな馬鹿なことはないとすぐにわかると思いますが、では裁判所はどのように故意の有無を判断するのでしょうか。