私たち弁護士は、何らかの交渉案件を依頼されたとき、相手方に対して書面を送りつけて戦いの火蓋を切って落とすことが少なくありません。
弁護士からの書面が届けば、多かれ少なかれ普通の人はギョッとするでしょうし、いかつい職印が押してあれば書面にも重みがありますから、受け取った側としても、それなりの対応をしようと考えるのも自然なことだと思います。
ところが、それを悪用するケースが最近散見されているようです。
悪質なサイトを開いてしまい、法外な請求をされるという事案は、インターネットが普及し始めた頃から時々みられました。裁判所からの連絡を装って「訴状提起最終処分証明書」等という摩訶不思議な表題のハガキを送るとかいった手口も一時期流行したものです。
一種の振り込め詐欺みたいなものであり、私たちが電話をかけて追い払う(請求をやめさせる)ことも、業務の一環としてよくありました。
最近の流行は、実在の弁護士や法律事務所を名乗り、「あなたに対して訴訟を提起する」と告げる形で連絡を迫るもののようです。
言うまでもなく、これでお金を巻き上げたら当然詐欺以外の何物でもありませんし、弁護士側にとっても、それによって名誉を傷つけられたり(名誉毀損罪)、無関係な電話やファクスの対応に追われたりするなど(偽計業務妨害罪)、大きな損害を被ります。
詐欺集団の手口は千変万化しとどまるところを知りませんが、その被害に遭ってお金を取られてしまうと、多くの場合、そのお金はほとんど戻ってきません。仮に犯人が捕まったとしても、取られたお金は散逸してしまっていて、犯人の手元に残っていないことがほとんどです。
そもそも、弁護士が重要な内容の文書をハガキで送るはずがありません。
見慣れない郵便物が届いたとしても、少しでも疑問を感じたら、まずは専門家に一報入れて相談するなど、安易な対応を慎むだけでも被害は防げます。
さらに一歩進んで、(本物の)弁護士に相談いただければ、適切な被害申告等を通して、さらなる被害者の発生を未然に防ぐことにもつながるかもしれません。
このような詐欺の手口にはくれぐれもご注意くださいね。