裁判員制度は、平成21年5月21日にスタートし、平成26年5月21日で丸5年を迎えます。
スタートから平成25年12月までの間に、裁判員裁判で6060人の被告人に判決が言い渡されました。
今回のブログでは、裁判員制度が導入された趣旨に遡って現在の裁判員裁判の実施状況について書きたいと思います。
刑事裁判は、①専門性が高く国民にとって理解しにくいものであったり、②長期間審理を要する事件があったりして、近寄りがたいという印象を与えてきました。
そこで、①国民にとって分かりやすく、②迅速な裁判を実現するために、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(いわゆる裁判員法)が作られ、平成21年5月から裁判員裁判が運用されています。
弁護士・検察官(もちろん裁判所)は、法律の専門知識を持たない裁判員にわかりやすい説明で、納得し結論を出してもらわねばなりません。そのため、制度面や運用面での工夫がなされています。
この運用面や制度面での工夫は次回述べるとして、ここから裁判員裁判の実施状況について述べて行きます。
公訴事実を認めた場合(自白事件)、審理は主に量刑に関して行われますが、平均開廷回数は3.2回(平成21年)から3.8回(平成26年)に増加し、平均実審理期間は3.5日(平成21年)から5.9日(平成26年)に増加しました。
公訴事実を否認する場合(否認事件)、平均開廷回数は3.7回(平成21年)から5.6回(平成26年)に増加し、平均実審理期間は4.7日(平成21年)から11.3日(平成26年)に増加しました。
このデータからは、国民にとって分かりやすい裁判を実現するために、迅速な裁判を犠牲にしつつあることが分かります。
しかも、法曹三者が分かりやすい裁判を実現しようとして、審理時間が長くなればなるほど、裁判員が裁判に参加するための集中力も低下していき、結果、国民にとって分かりにくい裁判になってしまいます。
また、公判後、その裁判における事実認定や量刑を決めるために裁判官と裁判員で評議をするのですが、その平均評議時間が自白事件では377.3分(平成21年)から550.1分(平成26年)に増加し、否認事件では477.3分(平成21年)から881.6分(平成26年)に増加しました。
550分といえば9時間、881分といえば14時間です。
このデータからは、裁判官が分かりやすい裁判を実現するために、裁判員に対して日々言葉を砕いて評議をしている様子が伝わってきますが、一方で、一般市民である裁判員の多大なる負担も伝わってきます。
自白事件であっても否認事件であっても1日では評議できていないということですからね。大変です。
以上のように、裁判員裁判を開始して5年が経ちましたが、審理期間や評議時間は延び続け、いまだ法曹三者の中で試行錯誤が続いています。