こんにちは。今回は、被害者の個別的な事情についてお話ししたいと思います。
交通事故に遭われた被害者の方々は、性別、年齢、収入や身体的特徴等、様々な違いがあります。このような違いについては、実務では、原則としてあるがまま受け入れられています。
例えば、休業損害や逸失利益の算定は、原則として被害者の事故当時の収入に基づいて算定されます。事故当時、無職ならば休業損害は支払われませんし、一方、収入がどんなに高額でも、事故と因果関係があれば休業損害として収入相当額が認められることになります。
また、一般的には、年齢を重ねるほど傷の治りが悪くなるように思われるかもしれませんが、実務上は、老人であるが故に、健康な大人よりも治療期間が長くかかったとして、賠償額が減額されることはありません。
運転手と同乗者の両名から相談を受けた案件で、運転していた人は、ほぼ無傷で済みましたが、同乗者は事故から半年以上経過していても治療が必要なケースがありました。同じ事故に遭っていながら、一方は無傷、他方は怪我を負っているのは不思議なように思われるかもしれません。しかし、上記の「あるがまま」という考えからは、「運転手は怪我をしていないのだから、同乗者が怪我をしているのは、同乗者が弱かったのだ。だから怪我をしたのは被害者が健康上損害を受けやすい体質だったのだから、加害者には賠償責任がない。」という主張は基本的に通らないということになります。
以上のように、実務上は、被害者の違いを、あるがまま受け入れるのが原則ですが、このことは、被害者が請求したまま損害を認めるということを意味するのではない点は注意が必要です。
例えば、軽微なむちうちの事案において、通院期間が長期間に渡ってくると、保険会社から、休業損害の打切りの話が度々出されます。事故によって働けないと認められれば損害として支払われますが、就労が可能となれば(つまり因果関係がないと判断されれば)それ以降の休業損害は支払われないことになります。