皆様こんにちは。弁護士の菊田です。

 本日は、損益相殺と呼ばれる問題についてお話したいと思います。

 損益相殺とは、被害者が交通事故による損害賠償を受ける際、被害者がその交通事故に起因して損害賠償以外に何らかの利益を得た場合に、その利益が交通事故による損害の填補であると認められる場合には、損害賠償額から当該利益の額を控除することをいいます。

 このような制度を認めないと、被害者は、加害者からの賠償で損害が填補されたはずなのに、交通事故によってさらに別の利益を取得することになってしまいます。被害者といえどもさすがにこのような利益を享受するだけの権利はない、という考えがこの制度の根底にはあります。

 損益相殺の対象となるか否かは、当該利益が損害填補を目的とするものか、当該利益を最終的に負担するのは誰か、といった観点から判断されます。例えば、損害の填補ではなく、被害者の生活保障を目的とする傷害保険は、損益相殺の対象とはならず、賠償額からの控除を受けません。

 過去に、損益相殺の対象と認められ、賠償額から控除された利益としては、以下のようなものがあります。

  • 各種社会保険給付(遺族厚生年金、障害厚生年金、労働者災害補償法による休業補償給付金等)
  • 受領済の自賠責損害賠償額
  • 受領済の、政府の自動車損害賠償保障事業填補金

逆に、控除されなかった例としては、以下のようなものがあります。

  • 自損事故保険金
  • 搭乗者傷害保険金
  • 生命保険金

 もし、交通事故の被害者の方で、賠償金以外に受け取ったお金がある場合には、そのお金が後になって賠償額から控除されて、期待していたほどの賠償額は得られなかったということもありうるので、不安のある方は、1度ご相談頂ければと思います。