1 はじめに

 交通事故の事案の中には、複数の車両が関与する多重事故のようなものもあります。
 そしてこの場合、各加害者について、「共同不法行為」が成立することがあります。
 そこで今回は、この共同不法行為が成立するとどういったことになるのかについて見ていきたいと思います。

2 請求できる額

 民法719条1項は、「数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う」(前段)、「共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも同様とする」(後段)と定めています。

 この前段と後段が想定しているケースは区別されるのですが、いずれにせよ、共同不法行為が成立すると、「各自が連帯して」損害を賠償する責任を負うことになります。
 この「連帯して」とは、一般的な契約関係のときに負うような連帯債務とは若干異なる点がありますが、基本的に各自が全損害額について責任を負うことになるという点では共通しています。

 したがって、共同不法行為が成立すると、被害者は、過失のある各加害者に対して全損害額の請求を行えることとなります(最高裁平成13年3月13日判決等。ただし、二重取りができるわけではありません。)。
 このことにより、被害者としては、個々の加害者の行為がどれだけ自分に損害を生じさせたのかという点についてそれぞれ立証しなければならないという負担から解放されることになります。
 (ただし、請求が認められる額が責任の程度に応じて減額される可能性がないわけではありません。)

3 負担部分

 上記のように、各加害者が損害の全額を被害者に対して賠償しなければならないとしても、各加害者間の関係はどうなるのでしょうか。

 この点について判例は、責任割合にしたがって決められる負担部分を超えて被害者に賠償した加害者は、他の加害者に対して負担部分を超えて支払った部分については支払いを請求(求償)することができるとしています。
 そのため、損害の発生について責任が小さい加害者は、支払いを行った後で他の加害者に対して求償することで、最終的な負担額を小さくすることができます。

4 最後に

 以上のような点が、共同不法行為が成立した場合の主な効果ですが、共同不法行為については、そもそもどういった場合に共同不法行為が成立するのか?被害者に過失があった場合どうなるのか?示談はどうするのか?などといった点が問題となり、非常に法律関係が複雑となります。

 もし、多数の当事者が絡むような事故に遭った場合は、一度専門家にご相談されると良いかと思います。

弁護士 福留 謙悟