1.はじめに

 皆様、こんにちは。
 今日は、歩行者が横断歩道上ではなく、横断歩道から少し離れた場所から道路を横断しようとして車両と接触し事故に遭った場合について考えてみたいと思います。

 道路交通法上、車両は、横断歩道により横断している歩行者がいる場合は、当該横断歩道の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならないとされています(道路交通法38条1項)。このように、横断歩道により道路を横断する歩行者に対しては強い法的な保護が与えられています。

 そして、歩行者においても、道路を横断しようとするときは、横断歩道がある場所の付近においては、その横断歩道によって道路を横断しなければならないとされていますので(道路交通法12条1項)、歩行者が横断歩道ではなく、横断歩道付近を横断しているときに車両と接触した場合には、横断歩道により道路を横断した歩行者以上の過失が認められてもやむを得ない面があります。

2.横断歩道から1~2mほどはずれて横断した場合

 では、歩行者が横断歩道からわずかに1~2mほど外れて道路を横断した場合はどのように考えるべきでしょうか。
 厳密に考えれば、横断歩道により横断しているわけではありません。しかし、横断歩道からわずか1~2m外れただけで、横断歩道により道路を横断する歩行者以上の過失が認められるというのでは酷だと感じられる方も多いかと思います。

 具体的な道路状況や交通事情等に応じて多少差があるかもしれませんが、通常、横断歩道の端から1~2mほどの場所において道路を横断した場合には、横断歩道により横断したものと同視してよいとされています。したがって、横断歩道から1~2mほどはずれて横断したとしても、基本的には、横断歩道により道路を横断する歩行者と同様に、「横断歩道上の事故」として車両と歩行者の過失割合を判断することになります。
 「横断歩道上の事故」として過失割合を判断することとなると、例えば、横断歩道の信号が青であった場合、基本的には歩行者に過失は認められません。

3.横断歩道から少し離れた場所での横断

 しかし、上記2とは異なり、横断歩道から10~20mほど離れて道路を横断した場合には、具体的な道路の幅員等の道路状況や交通量等により多少の差はあるかもしれませんが、通常の人であれば道路を横断するにあたって横断歩道を利用するであろうと考えられる距離の範囲内であるとされます。この場合、横断歩道による横断と同視される上記2とは異なり、「横断歩道上の事故」ではなく、「横断歩道の付近における事故」として、車両と歩行者の過失割合を判断することになります。1でも触れたように、歩行者においても、道路を横断しようとするときは、横断歩道がある場所の付近においては、その横断歩道によって道路を横断しなければならないとされていますので(道路交通法12条1項)、歩行者にも少し過失が認められやすくなります。

 「横断歩道の付近における事故」として過失割合を判断するとなると、例えば、横断歩道の手前10~20mで歩行者が道路を横断しようとして事故に遭った場合、たとえ横断歩道の信号が青であっても、基本的に歩行者にも過失が認められてしまいます(横断した道路が交通量の多い幹線道路である場合などにはさらに歩行者に過失が加重されることもあります)。

4.最後に

 用事などで急いでいるときには、横断歩道まで行かずに、横断歩道の手前などで道路を横断する方もいらっしゃると思いますが、その場合には、横断歩道上で事故に遭った場合よりも歩行者に過失が認められやすくなることを今一度確認していただき、なるべく横断歩道上をわたるように気を付けていただければと思います。