(2)緊急自動車の特例

 法上の緊急自動車に該当すると、道路の通行について、特別の措置が適用されます。
 例えば、一時停止義務がある場合であっても、徐行して進行することができるため(法39条2項)、上記事例のような赤信号で交差点に進入することも、法的に許容されています。
 また、緊急自動車側のみならず、一般車両側に対して、緊急自動車の優先という形で義務が課されます。

 具体的には、緊急自動車が、交差点又はその付近に接近してきたときは、交差点を避けて、道路の左側によって一時停止しなければならず、交差点又はその付近以外の道路で緊急自動車が接近してきたときは、道路の左側によって進路を譲らなければならないとされています(一般車両の避譲義務(法40条))。
 そのため、緊急自動車が交差点に進入してきたときは、対面信号が青信号であっても、一般車両は道を譲らなければなりません。

 このような特例があるから、緊急自動車が赤信号で交差点に進入してきたときに青信号で交差点に進入してきた一般車両と衝突したとしても、青信号で交差点に進入した一般車両の方が8割悪いとされているのです。
 実際上も、緊急自動車は、サイレンを鳴らし、警光灯を光らせながら徐行して交差点に進入してくるのであり、一般車両としては、緊急自動車が接近してきていることを認識することは容易ですので、やはり基本的に事故の原因は一般車両にあることが多いといえるでしょう。