共同不法行為について

 こんにちは。今日は交通事故に遭われたお客様がお怪我の治療がまだ終了していないうちに、さらに事故に遭われた時のお話をしようと思います。

 例えば、平成26年12月1日に追突事故(第1事故といいます。)に遭われ頸椎捻挫の傷害を負ってしまい整形外科への通院治療をしていたAさんが、翌年平成27年2月1日にさらに追突事故(第2事故といいます。)に遭われて頸椎捻挫と腰椎捻挫のお怪我に遭われて、第2事故の症状固定時に残存する頸椎の障害が後遺障害に該当すると認定されたとします。

 Aさんとしては、第2事故に遭われたときにも第1事故の治療をまだ継続するつもりで第2事故の前日にも、整形外科での診察加療を受けていました。

 このような場合に、Aさんは後遺障害にかかる損害及び第2事故の日以降の治療費や慰謝料等の賠償を誰に対して請求できるのかが問題になります。

 第1事故だけであれば、症状固定するまでの間第1事故の加害者に対して全損害額の請求ができますが、第1事故の症状固定前に第2事故に遭ってしまったため後遺障害及び第2事故の日以後の治療費が第1事故の加害者の責任なのか第2事故の加害者の責任になるのかあるいは両者の責任になるのかという問題です。

 これについて、まず後遺障害については、第2事故までに症状固定していなかった場合に、Aさんの後遺障害は第1事故と第2事故を一体化して考えるべきであるとした判例があります(東京地裁平成21年2月5日判決)。

 そして、第2事故以降の損害については、第1事故の加害者と第2事故の加害者の共同不法行為(民法719条1項後段)が成立し、両加害者は第2事故の損害について連帯して責任を負うと判断しています。

 第1事故と第2事故とがあいまって傷害結果を重くすることは十分あり得ることですが、第1事故による傷害と第2事故による傷害とを明確に区別できないのではないかと思われます。そのような場合に、上記判例のように結果として生じた傷害(後遺障害を含む。)についての全損害額を算定し、これについて第1事故と第2事故との責任割合を判断しそれぞれの加害者にその責任割合に応じた損害の賠償責任を負担させるという解決策を紹介させていただきました。

 今回の事例のように第1事故と第2事故とが共同不法行為に当たらない場合はどうなるのかについて、また違う機会にお話ししたいと思います。