1 はじめに

 交通事故で被害者が亡くなった場合、遺族は葬儀を行ったり、墓碑を建立したりする必要が生じます。
 そこで、今日はこれらの費用を交通事故の相手方に請求することができるのかお話したいと思います。

2 葬儀費用と墓碑建立費用等との違い

 葬儀費用については、人は誰でも一回は死亡し、その葬儀を必要とするとはいえ、事故がなければ直ちに支出することを余儀なくされなかったといえるので、事故によって被った損害とすることについては基本的に問題となりません。

 これに対し、墓碑の建立や仏壇の購入にかかった費用ついては、事故と因果関係のある損害といえるのかが問題とされることがあります。

 この違いは、葬儀は、主として死亡した被害者のために行われるものであるのに対して、墓や仏壇は、被害者のためだけに購入されるものとは限らず、将来その一家や子孫の全員の霊をまつることになりえるという点にあります。

3 判例

 この点について判示した判例が、最高裁昭和44年2月28日判決です。

 この判決は、墓碑の建立や仏壇の購入にかかった費用と、事故との因果関係を認めつつ、その金額については、墓碑や仏壇が、被害者のみではなく、

「将来にわたりその家族ないし子孫の霊をまつるために使用される場合には、その建設ないし購入によって他面では利益が将来に残存することとなるのであるから、そのために支出した費用の全額を不法行為によって生じた損害を認めることはできない」

と判示しました。

 その上で、「社会の習俗上その霊をとむらうのに必要かつ相当と認められる費用の額が確定されるならば」、その限度で損害の発生を否定することはできないとし、費用の額の確定は、鑑定その他の方法を用いるべきとしました。

4 実務

 上記判例が出されたことから、現在では、仏壇購入費用等にかかる損害が事故と因果関係があることについては、特に問題とならないと考えられます。
 実際に支払われる賠償金としては、これらの費用を賠償金に計上した上で、150万円の限度で認めるといった取扱いがなされることが多いようです。

弁護士 福留 謙悟